ルミネ、未来の顧客を増やす「ひみつ」とは? 駅ナカに甘えず、地道な戦略重ねていた

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確かにこの漫画は大人が読んでも、ルミネの魅力が伝わってくる。私事で恐縮だが、先日筆者は大雨の中、高校生女子のバースデーパーティに向かうために娘の手を引きながら走っていた。パーティが始まる時間は刻一刻と迫っているのにプレゼントはまだ買えていない。大雨・子連れで駅の外には出たくない。でも勝機はあった。なぜなら乗り換えの駅が新宿だったからだ。

「ルミネに行けば何とかなる。絶対に彼女が気に入るものが見つかる」。呪文のように心の中で繰り返しながらルミネ2に飛び込み、まずはコスメショップでリップを買った。そのあと隣りのホームウェアのお店でヘアバンドを、雑貨のセレクトショップでチョコレートを買い、短時間でプレゼントセットを手にすることができたのだ。

その時は漠然と「ルミネに行ったので何とかなった」と思っていたが、「ファッションビルのひみつ」の中に、まさにその秘密が描かれていた。それは「ワンストップ・ショッピング」というルミネならではの工夫だったのである。

「1階=靴、2階=婦人服などと、階ごとに種類を分けず、一つの階でも、服や靴、スイーツなどいろいろな商品が買えるようになっている」ことをワンストップ・ショッピングと言う。

漫画の中で、弟のジュンの、ファッションビルなのになぜ雑貨や食べ物、お花を売っているお店もあるのかという疑問に、ユイが答えている。「お客さまが選ぶものって、ファッションも食べ物もお化粧品も好みが共通していることが多いの。簡単に言うと、カラフルなショップのとなりに同じようなケーキ屋さんがあれば、カラフルなものが好きなお客さまは、どちらも楽しめるでしょう?」

長年ルミネを使い続けてきた筆者には体感でこのワンストップ・ショッピングを知っていたのだとあらためて気づかされたのである。

新しい仕掛けも続々

ルミネの諏訪営業本部長(左)と原田マーケティングコミュニケーション部長(筆者撮影)

ルミネは新しい仕掛けもどんどん仕掛けている。JR新宿駅東南口高架下にある「新宿サナギ」は、ポップでクリエイティブなビジュアルを売り物にしている。

海外からインスピレーションをもらい、そして海外から来た訪日者、観光客に新宿の魅力を逆に発信して戻す「食」の場である。派手な外装は一見の価値ありだ。新宿駅の真横という立地にして、大きなソファあり、座敷ありのラフで居心地の良い空間には、多くの女性客がまったりとした時間を過ごしている。

「駅ナカという地の利を生かした」。ルミネが成功した理由を誰もがこう考えるだろう。確かに間違ってはいない。しかし、地の利に甘えることなく、次々と新たな展開を打ち出すことが真のルミネの力なのだ。

さとう ようこ ライター、宣伝プランナー

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Yoko Sato

美術大学卒業後、クルマ会社のハウスエージェンシーにて広告宣伝・販売促進のクリエイティブディレクターを務める。転職した広告代理店に勤務していたときに担当していたゲーム会社から受託し、シナリオライターに。その後、顧問として家庭用ゲームソフトの広告ディレクターおよびコピーライターとなる。現在はゲーム会社出身のママ友に誘われ、エンターテインメント系デザインプロダクションにライター&プランナーとして参加している。

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