「東京ゲームショウ2008」開幕 新世代機ハード普及進み、ゲームソフトの競争本番へ 

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●海外市場の勝者となるためには

続いて行われたのが、カプコンの辻本春弘社長、バンダイナムコゲームスの鵜之澤伸副社長と和田氏によるパネルディスカッション、「業界トップが語る グローバル時代におけるトップメーカーの戦略と展望」、そしてマイクロソフトのバイスプレジデント(LIVE、ソフトウエア、サービス担当)のジョン・シャパート氏による講演「世界へと続くキャンパス」。いずれもグローバル化するゲーム産業のなかで、日本のゲームソフトの可能性と課題について、日本の主力メーカーの立場から、また、プラットフォームホルダーとしての海外ハードメーカーの立場からそれぞれ浮かび上がらせるような内容だった。

パネルディスカッションは、自社のグローバル化がどこまで進んでいるか、という問いに対し、スクエニの和田社長は「1合目」と厳しい見方を示した。対して、辻本氏の見立てによれば、「カプコンは3合目」だという。スクエニはドラゴンクエスト、ファイナルファンタジーといった圧倒的なタイトルシリーズを持つものの、日本での売り上げを海外での売り上げが大きく超過するようなタイトルはまだないことが、和田氏の現状認識が厳しい理由だという。その点、国内では「モンスターハンター」がヒットする一方、海外でも「デビルメイクライ」や近々新作をリリースする「バイオハザード5」といった大型タイトルを抱えるカプコンは、それなりの手応えを感じているということだろう。ただ、辻本氏も、「開発は現地化が進んでいても、組織や投資やプロモーションなどに対する経営側の意識改革はまだ十分ではない」という。

一方、「作品点数でいえば世界最大級」(鵜之澤氏)というバンダイナムコゲームズの場合、今年世界で200万本以上のヒットとなった「ソウルキャリバー4」のように、完全に欧米市場向けを意識した“カプコン型”の作品を持つ一方で、「ファミリースキー」や「太鼓の達人」といった遊びの新しい提案としての“任天堂型”の両面展開を打ち出している点が特徴的だ。バンダイとナムコの合併によって生まれた総合力、という見方もできるが、それが強みであると同時に、運営面においては課題ともいえるだろう。

日本でもじわじわと存在感高めるXbox360

日本では、マイクロソフトのXbox360は発売以来、苦戦が伝えられてきた。だが、北米や欧州での普及は順調であり、世界を目指すゲームメーカーにとっては無視できない存在。「日本のゲーム開発者を巻き込むために、開発ツールの提供やオンラインサービスの開発、コンソール価格の引き下げといった手を次々と打ってきた。その成果は着実に現れており、今年末までにXboxでの日本メーカーのゲームソフト売り上げは累計で10億ドルに達する」--基調講演でシャパート氏はそう語った。

また、この勢いはさらに加速する、といわんばかりに、今年から来年にかけて日本のゲームの大型新作の発売時期を正式に発表した。まず、スクエニの新作「ラストレムナント」が今年11月20日に全世界同時発売されるのに続き、同「スターオーシャン4」が2009年2月19日に日本で、3月3日に北米で発売される。さらに、カプコンの「バイオハザード5」やバンダイナムコゲームズの「鉄拳6」は09年秋の発売を予定しているという。

こうした動きを反映してか、ゲームショウの展示会場でもXboxの存在感は年々大きくなっているようだ。今年のゲームショウの出展タイトル数に占めるXbox360用ソフトの比率は7%で過去最高。前年の4.9%より大幅に増加した。いわゆる新世代機のなかでは筆頭のWiiの7.1%(前年は8.1%)に迫る水準だ。ちなみに、PS3は3.5%で、前期の3.2%から微増にとどまっている。タイトル点数の増加がそのまま売り上げの増加につながるという保証はないかもしれないが、価格引き下げの効果も大きい様子。「非常にいい流れになってきた。普及に弾みがつく兆しを感じている」(マイクロソフト幹部)と、手ごたえを感じているようだ。

Xbox360向けソフトの増加は、その裏返しとして、各ソフトメーカーが複数のゲーム機向けにタイトルを発売する「マルチプラットフォーム化」が進んでいることの現れでもある。たとえば、コナミのサッカーゲーム「ウィニングイレブン」シリーズはかなり前から複数ハード向けにマルチ展開しており、上述の「バイオハザード5」や「鉄拳6」も、PS3向けに同時に発売される予定だ。
(勝木 奈美子 =東洋経済オンライン)

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