再挑戦するユニクロ--フリースブームから8年、V字回復に見る自信

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ブーム後ぶれ続けた軸足 紆余曲折を経て得た結論

07年度はユニクロにとって、ヒット豊作の年だった。秋冬には吸湿保温効果の高い「ヒートテックインナー」を2000万枚売り、春にはキャミソールやタンクトップにブラジャーのカップをつけた「ブラトップ」を300万枚売った。いずれもリピート性が高く、まとめ買いできる手頃な価格で、重ね着やコーディネートの基本アイテムとして、キャンペーンに乗せて爆発的に売った。アパレル業界では、これを単純に、ユニクロの得意な勝ちパターンが連続した、と見る向きが多い。

が、これは決して以前からの“勝ちパターン”だったわけではない。練習してうまくなったことの一つ。それがヒット商品の作り方にある。

かつてユニクロの知名度を絶対的なものにまで高めたフリースは、日本人に目新しく、初めて手に取る人も多い防寒衣料だった。そして、他メーカーなら5000円以上つけるところを、1900円という低価格で売る。大々的なプロモーション効果もあってこれがブームを巻き起こし、00年秋冬には2600万枚という驚異的な数を売り上げた。

ブームが一巡し、業績が大きく落ち込んだ後も、ユニクロは次のヒットの種を探し求める。が、希少な素材を大量に調達して低価格を実現した商品は、その希少価値が消費者に伝わらなかったし、新たな機能性を打ち出した商品は、デザイン性に欠けて盛り上がらなかった。

取引先のある関係者が振り返る。「あの頃は、『安いモノではなくてトレンディなモノ』と言ってきたり、目新しさを強調してきたり、何を売りたいのかまったく明確でなかった。それでも、100万枚売れるモノを持ってきてくれと」。そこにはつねに、フリースの成功体験が付きまとっていた。

試行錯誤の末、久しぶりに実現したヒット商品は、06年秋の「スキニージーンズ」だ。女性向けの強化とともにファッション性を打ち出し始めたユニクロが、業界に先駆けて投入したこの商品で、ついに400万本のヒットを飛ばす。が、ここに次なる試練の芽が潜んでいた。「ユニクロはファッションでいける」という過信が、また失敗を招くのだ。

06年度の秋冬では、それまでのベーシック商品を減らし、トレンドを意識した商品を初めて大量投入した。ユニクロのイメージアップ、新規客の獲得が目的だった。が、結果は不発。ベーシック商品の欠品が相次ぎ、既存客の足を遠のかせてしまったのだ。この失敗で、柳井正ファーストリテイリング会長兼社長はついに確信する。「われわれの商品のポジションは、ファッションを取り入れたベーシック商品である」。

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