外資系金融に吹き荒れるリストラの嵐、路頭に迷うセレブ失業者

外資系金融に吹き荒れるリストラの嵐、路頭に迷うセレブ失業者

東京に拠点を置く外資系金融機関では9月以降、リストラの嵐が一段と強まっている。

金融機関への人材紹介ビジネスを手掛けるエグゼクティブ・サーチ・パートナーズは、今年8月20日までの過去1年間に外資系金融機関でリストラされた人数を調査。8月25日にその結果を公表している。金融機関内部の親密者などからヒアリングした結果などを総合して集計した調査リポートによると、外資系金融機関の総従業員2万7819人のうち4%に相当する1109人が、会社側の事情による退社を余儀なくされた。

ただし内訳を見ると、この時点まではリストラの対象となった部門は限定的だった。突出していたのが、不動産関連部門で、同部門だけで408人が解雇されている。サブプライム危機後、レバレッジを利かせた不動産投資が下火になり、CMBS(商業不動産担保証券)など証券化ビジネスが一気に冷え込んだ。モルガン・スタンレー証券、メリルリンチ証券などが昨年末に不動産証券化部門の縮小や撤退を進めるなど、大規模なリストラもあった。一方で個人向けの資産運用ビジネス部門のリストラ数は98人にすぎず、毎年1割近くの人材が入れ替わるという外資系金融機関の状況から見て、決して多い水準ではなかった。

それどころか、新規採用意欲も盛んだった。エグゼクティブ・サーチの小溝勝信代表取締役によれば「8月までのリストラは市場環境の変化へ対応した人材の入れ替えという性格が強かった。不動産の人材を減らす一方でディストレス投資(市場価格が大幅に下落した資産への投資)の人材については強い引きがあった」という。しかし、外資系金融機関の人材採用シーズンは、決算期の都合から年末年始に集中する。そのため、8月までにリストラされた外資系社員の多くは慌てて再就職を決めることは少なく、割増退職金を使いながら年末の就職シーズンまでリゾート地などで骨休みをしようと決め込む“セレブ失業者”が多かったようだ。

いま辞めるのは損 整理解雇に応じぬ社員

こんな雰囲気が9月15日のリーマン・ブラザーズ証券破綻でガラリと変わった。部門ごとのリストラではなく会社ごと吹き飛んでしまう事態になり、外資系金融機関の雇用環境は一気に悪化。小溝代表は「もはや年末まで待てば再就職先が見つかるという環境ではなくなった。短期的に好転するとは思えず、むしろさらに悪化する懸念が強い。外資系金融機関のリストラはますます多くなるだろう」と読む。

ますます強まるリストラの嵐。ただし、会社側の事情による整理解雇は、そう簡単には進まない。これまでは、目の前にかなりの金額の割増退職金が積まれていること、再就職のためにはもめ事を起こさないほうが無難であることから、素直に退職勧告に従う社員が多かった。しかし、雇用環境が悪化していることから、いったん辞めてしまえばそう簡単に好条件での再就職先は見つからない。そのため、おいそれとは整理解雇に応じない社員が徐々に増えてきた。

たとえば、年収2000万円の社員が整理解雇に応じず、勤務を続けているケースがある。「賞与はゼロだが基本給の月収150万円はそのままもらって1日中、新聞を読んでいる」(米系証券会社中堅社員)。「東京地裁に地位保全の訴えを検討している社員がかなりいる。(割増金などの)パッケージがあまりよくないため、今喜んで辞めるような社員はいない」(米系銀行若手社員)。

救いもある。今の東京の人材マーケットを見ると、すべての金融機関がリストラモードではない。「2001年のITバブル崩壊時は、国内金融機関も不良債権処理に追われ採用どころではなかった。それに対し今回は国内金融機関の採用意欲が強い」(小溝代表)。メガバンクや大手証券会社にとっては、今こそグローバルに通用する専門知識を持った人材を採用する千載一遇のチャンスというわけだ。

大手コンサルティング会社、ベリングポイント日本法人の内田士郎社長は「ここに来てヒューマンリソースマネジメント部門は非常に繁忙。採用に関するコンサルティングが急増している」と言う。ただし、日本の金融機関が外資系で活躍した人材を雇い入れるのは簡単ではないという。「仲間同士であることを前提とした日本型の人事制度を切り替え、専門的な能力を持った人材を受け入れる仕組みをつくれるかどうかがグローバル人材を定着させるためのカギ。今回は日本の金融機関が自分自身を変える大きなチャンスだ」(内田社長)。

最大の焦点になるのが、野村ホールディングスが引き取ったリーマン・ブラザーズ証券のアジア・パシフィック地域(株式、債券、投資銀行部門)と、欧州・中東地域(株式、投資銀行部門)の人材。野村の海外はすでに年俸制を基準とする人事体系のためスムーズに再雇用できるが、課題は日本で引き取る東京の社員約1300名の処遇だ。当面は直近の雇用条件を継続するが、いつまでも野村と異なる賃金体系を維持できるわけではない。これを機に、野村自身がどれだけ変わることができるかが、問われている。

(週刊東洋経済)

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