日本の企業人は、「日本」にこだわりすぎる

JTのエースと語る、日本企業のこれから(下)

ほかの日本企業との大きな違い

瀧本:そもそも筒井さんは、なぜ自身が経営企画部長に抜擢されたと思いますか。

筒井:人事側の観点と、私自身の観点と2つあると思っています。

筒井岳彦(つつい・たけひこ)
日本たばこ産業・経営企画部長
1975年生まれ。父親の仕事の都合で、5〜9歳までアメリカで過ごす。1997年、早稲田大学理工学部卒業後、JT入社。小田原工場に配属され、生産管理業務を担当。2001年から、本社製造統括部製造部に所属し、2003年から企業買収プロジェクトを担当。2005年より、ジュネーブのJTインターナショナルに出向し、ギャラハー社の買収プロジェクトなどに参画。2008年よりコーポレートストラテジー担当部長とし て、JTインターナショナルのCEOをサポート。2012年3月に本社に異動し、37歳で経営企画部長に就任。

まず人事側でいうと、人事を司っているシニアの人たちが、リスクを取る人たちだということです。「筒井ならできるんじゃないか、やらせてみよう」ということで、押してくれたのだと思います。次に、自分自身に関していうと、新入社員の頃から、自分に当てられた責任範囲、ミッションの中で、しっかり成果を出してきたからではないでしょうか。

瀧本:なるほど。でも、その背景には危機感もあったのではないでしょうか。たばこ事業の場合、国内は成長しませんし、突発的な規制の変化によって、窮地に追い込まれるリスクもありますから。

筒井:危機感はつねにあります。1996年以降、国内市場でたばこの総需要は減り続けており、「変わらないといけない」「未来を先取りしないといけない」という思いは強く持っています。違う言い方をすると、たばこ産業は、比較的先が読みやすい産業と言えるかもしれません。

2004年度に大きな合理化が行われましたが、それはいわゆる追い込まれてやる合理化ではなく、これから厳しくなるのが見えているので、希望退職を受け入れていただいた社員たちにちゃんと報いられる今のうちにやろう、ということだったのだと思います。

瀧本:変化が起きるのはわかっていても、その速度は意外にゆっくりなんですよね。

筒井:それはあるかもしれません。

瀧本:同じ民営化 企業でもNTTの場合は、規制緩和は何回も来ましたけど、思ったよりインパクトは小さくて、さほど会社は変わらなかった。逆に変化が思ったよりも早かった のが、富士フイルムです。あの会社は本当に大きく変わりました。JTの場合は、ある程度、変化を読めたということですね。

筒井:そうですね。海外進出も、1999年のレイノルズインターナショナル買収でスタートしたわけではなくて、もっと早くから取り組んでいました。

最初は日本から輸出するビジネスモデルで、台湾や韓国などの近隣諸国を中心に事業を始めましたが、事業の展開スピードに限界がありました。そこで 1992年に小さなイギリスのたばこ工場を買収して、ヨーロッパでの事業ベースをつくろうと一生懸命頑張りましたが、ブランドを築いていく速度と、国内の 事業の衰退速度が折り合いませんでした。そうした経緯もあって、1999年の買収に踏み切ったわけです。

当時は、世の中から、「買収価格が高すぎる(注:買収価格は約9500億円)」「JTにマネジメントできるわけがない」と、痛烈に批判もされました が、われわれの狙いは明確でした。ほしかったのはマーケット・ブランド・事業インフラ・人材、そして時間です。当時のメンバーがこの買収を成功に導いてく れたおかげで、2007年のギャラハー買収につながりました。

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