次期議長としてイエレン氏が直面する政策課題 出口戦略難しく

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10月8日、オバマ米大統領は、9日に次期米連邦準備理事会(FRB)議長にイエレン副議長を指名する。2月撮影(2013年 ロイター/Kevin Lamarque)

[8日 ロイター] - オバマ米大統領は、9日に次期米連邦準備理事会(FRB)議長にイエレン副議長を指名する。予想通り上院で指名が承認された場合、イエレン氏は大規模な債券買い入れプログラムの縮小をはじめとする一連の重要な政策課題に直面することになる。

主な政策課題は以下の通り。

<拡大したバランスシート>

3回にわたる量的緩和(QE)でFRBのバランスシートは過去最高の約3兆7000億ドル規模に拡大。より正常な時期の約1兆ドルを大幅に上回っている。

一部では、債券買い入れプログラムが今後数年にわたってインフレを招き、発見しにくい市場の混乱と資産バブルを引き起こす可能性があると懸念されている。

FRBは投資と経済成長の促進に向け、月額850億ドルの債券買い入れを継続しているが、同プログラムを縮小したい意向。

バーナンキ議長は6月、年内に縮小を開始し2014年半ばまでにプログラムを終了する見通しだと発言した。ただ、9月にはこのタイムテーブルを確認しなかった。

イエレン氏が直面する課題は、金融市場を混乱させたり景気回復を妨げることなくプログラムを縮小することだ。

<金利の引き上げ>

フェデラルファンド(FF)金利は2008年終盤の金融危機の最悪期以降ゼロ付近に維持されている。

FRBの予想に基づくと、最初の政策引き締めは2015年までない見通しだが、インフレ動向や雇用情勢が予想から逸脱すれば、この見通しは変化する可能性がある。

FRBは少なくとも失業率が8月時点の7.3%から6.5%に低下し、インフレ率が2.5%を上回る可能性がない限り、低金利を維持する方針を表明している。しかし、投資家がFRBが意図するよりも早期の利上げを見込み始めた場合、借り入れコストは全般的に上昇し、景気回復を損ねる恐れがある。

金融市場は時折、FRBの政策に関するフォワードガイダンスの信頼性に疑念を抱いており、イエレン氏は市場の期待を導く主要な役割を果たす必要がある。

<失業、インフレ(またディスインフレ)>

誰もが現時点で、失業率は高過ぎ、インフレ率は低過ぎると感じている。そのため、FRBが非常に緩和的な金融政策の維持を決定するのは比較的容易だった。

雇用が一段と明確に拡大する前にインフレ率が低下すれば、政策当局者らは既に異例の規模となっている緩和策を拡大させるかどうか難しいかじ取りを迫られるだろう。しかし、インフレ率が上昇し、FRBの目標とする上限2.5%に届きそうな事態となれば、失業率が望ましい水準を上回っているにもかかわらず、政策当局者らは政策引き締めに追い込まれる可能性がある。

新たな議長にとって悩ましい問題となりそうなのは、銀行がFRBに預け入れている過剰準備に対する金利をFRBが初めて引き上げることができるようになることだ。この金利を引き上げれば準備金の市場への流出を阻止し、インフレ率の上昇を抑制することにつながるが、この手段が今までに試されたことはない。

<長期的な出口戦略>

将来を見据えれば、資産の売却、もしくは債券の償還を単純に待つことで、FRBはバランスシートをより正常な規模に縮小する必要が出てくる。保有資産の縮小を急げば急ぐほど、金融政策の引き締め度合いが強まり、売却資産を消化する市場へのプレッシャーが増すことになる。

しかし、おそらくFRBが最も気を配っているのは、FRBに損失が発生し、財務省への定期的な送金(国庫納付金)が一時的に停止することで、FRBの独立性を制限したいと考える政治家による批判を招く可能性があることだろう。

FRBの独立性を守れるかどうかは新たな議長の双肩にかかることになる。

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