5年後、日本のメディアコンテンツはこうなる 角川歴彦×川上量生対談(2)
これからもニコニコからは才能は生まれ続ける
角川:そうやって、面白そうなことをやっている人たちは、みんなくっついちゃうんだよね。かといって、川上くんは『カゲロウデイズ』のじんくんを囲い込む気なんて、まったくないんだよ。普通だったら囲い込んでもおかしくないのにね。だからこそ、これからもニコニコ動画からはいろんなクリエーターが輩出されると思う。
それを受け止めるには、映画もやっていて、音楽もやっている、ゲームもある、ラノベも出している、コミックもあるという会社に変わっていくしかないんじゃないかな、出版社も。
川上:今までは代理人やエージェント機能を持った会社の影響力が強かったけれども、ネットの時代になって、トータルでサポートできないと、個人のクリエーターにとってはメリットがないという時代になってきています。
角川:そういうクリエーターと付き合っていくのは大変なのです。知らないジャンルでも、どんどん飛び込んでいかないと、多彩な才能をサポートしきれない。編集者の要件のひとつはディレッタント(芸術や学問を、専門家としてではなく趣味として愛好する人)にある。何にでも興味を持つ。興味を持てなくなったら、編集者をやめたほうがいい。
それを大変だから不幸だと思うのか、それとも面白いと思うのか。面白いと思えば、こんなにすばらしい時代はないわけです。これからの編集者は、「活字の編集者です」なんて言っていたらダメなんだよね。
川上:そうですね。専門性だけをうんぬんするのは、価値が下がっていきますよね。
角川:新しいクリエーターが活字に向いていると思ったら活字の話ができて、漫画に向いていると思ったら漫画の話ができて、アニメが向いていると思ったらアニメの話ができて、音楽が向いていると思ったら音楽の話ができる。そういうふうになっていかなきゃならないね。ひとりでそんなに才能がなかったら、自分の欠けている部分をカバーできる人間を、つねにオーガナイズできる人間がエディターなのです。
川上:そういう観点では「プロデューサー」ですよね。
角川:そう、プロデューサー。だから、これからの時代、クリエーターを育てていくにはプロデューサー機能が必要なんです。
(第3回目は10月17日に公開予定です)
(撮影:西村 康(SOLTEC) 構成:田中幸宏)