「バイトは塾と風俗」、21歳女子大生の絶望感 「奨学金」は父親の生活費に消えている

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小倉さんは九州出身、大学進学で上京した。大学近くの住宅街で、一人暮らしをする。家賃は月6万3000円。年間100万円の学費は親が払うが、実家からの仕送りは一切ない。一切ないどころか、年間20万円程度を親の口座に送金しているという。

東京生活で日々かかるのは家賃、光熱費、食費、交通費、通信費、服飾費、図書費などなど。普通に生活するためには、月15万円はかかる。2年前、上京してからすぐに塾講師を始めた。経済的に苦しい状態は続き、半年前にカラダを売ることを決意した。現在の収入は塾8万~10万円、風俗20万円程度、若干余裕のある生活は送っている。

父親が「奨学金」を使っている

小倉さんは保育士を目指している。大学の成績はトップクラスという。

「高校で進路を決めるとなったとき、保育士になりたいと思った。別に子どもが好きとかじゃなかった。子どものとき、親から大事にされていなかったと思ったから。どうしても自分が幸せだと思えなかったし、もうそれは取り返しのつかないこと。ならば、自分が親からもらえなかった愛情を、ほかの子どもにあげられたらいいなって。それが保育士を目指すようになったキッカケですね」

家庭に問題があったようだ。実家には父親と妹がいる。中学生のときに母親は病死して、それから父子家庭となった。

「大学入っていろんな人に会って、もしかして親から大事にされなかったのかなって。あとから気づきました。父親は私と妹がいるからおカネがかかるみたいなことを怒鳴って、『お前には死んでほしい』って実際に首を絞められたり。さすがに肉体的に苦しめられると、大事にされているとは思わないですよ」

父親は53歳、ある士業で自営業だ。2人の子どもに基本的に興味はなく、趣味に勤しみ、父親と娘の距離は遠かった。聞いて驚いたが、彼女は返済義務のある日本学生支援機構の第一種(6万4000円)、第二種奨学金(12万円)をフルで借りていた。月18万4000円である。奨学金が振り込まれる彼女名義の預金通帳は父親が管理し、年間100万円の学費は奨学金から父親が支払う。余る年間120万円の奨学金は、父親が生活費に充てているという。

大学4年間で彼女が抱える負債は単純計算で883万2000円となる。上限年利3パーセントの金利を含めたら、返済総額は900万円を超えてくる。社会人になったとしても、低賃金が社会問題となる保育士だ。おそらく給与だけで単身で暮らすことすら苦しい。そのような経済状況の中で、900万円を超える負債を抱えて順調に返済ができるはずはない。彼女の未来は、すでに暗い。

「奨学金をフルで借りたのは、父親の薦めです。借金できるのはいいことだって契約させられました。私大なので学費もかかるし、それは仕方ないことと思っていました」

大学生の親にバブル世代が増えてから、子どもの奨学金を親の家計に組み込む話はよく耳にする。奨学金の契約時、本人は未成年なので、親任せなことが多く、詳しい内容をわからぬまま契約して負債を背負うことになる。

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