東京に進出する「ベンチャーカフェ」の正体 米ボストンで注目される起業のエコシステム

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マサチューセッツ工科大学(MIT)にほど近いケンドール・スクエアには数多くの企業が集積している(ケンブリッジ・イノベーション・センターの資料から抜粋)

ベンチャーカフェの本拠地であるボストンは、最近起業の街として注目を集めている。ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)という米国のトップ大学があり、バイオやテック系の企業も数多く集積。中でも、MITにほど近いケンドール・スクエアと呼ばれる地域は、アマゾンやアップル、グーグル、ジョンソン&ジョンソンなど多くの大企業が集積する一大拠点になった。2016年にはIoTに力を入れるゼネラル・エレクトリック(GE)が、本社をボストンに移している。

ボストンにある起業のエコシステム

ケンドール・スクエアの一角にシェアオフィス、ケンブリッジ・イノベーション・センター(CIC)がある。CICはMITの卒業生が1999年に共同で設立、スタートアップ企業や大企業の新規事業部隊などが数多く入居する。スマートフォンのOSとして知られる「アンドロイド」もここから生まれた。

実はベンチャーカフェは、CICの姉妹団体だ。ボストンではCICのシェアオフィスに入居している。ケンドール・スクエアでは、あらゆる規模・業種の企業、大学の研究機関、そしてVC(ベンチャーキャピタル)などが集積し、CICやベンチャーカフェがそれらの「ハブ」となっているわけだ。

CICのティム・ロウCEOは、「ボストンは技術発明の街。産業はバイオや素材、通信などが中心で、始めから起業が多いわけではなかった」と振り返る。「しかしそこにマイクロソフトやフェイスブックなどが進出し、ソフトウエア技術が加わった」。こうした産業の集積に目を付けたVC投資がこの10年で飛躍的に増え、いまや人口1人あたりのVC投資額は全米トップになった。

「いまイノベーションの地区は、郊外から都心に向かっている」(ロウCEO)。かつては企業や研究機関は1棟のビルの中で自己完結していた。しかし今は1社だけの力でなく、さまざまな企業と連携しながら面として横に広がる。そして、それらが情報や金融と結び付くために、郊外よりも都心にイノベーション地区ができやすい。そこにはベンチャーカフェのような交流施設も必要になる。

実はCICも、東京にシェアオフィスを開業することがほぼ決まっている。ベンチャーカフェはその先兵隊の役割も担っている。

企業の集積と、大学の横のつながり。そして人が交流するハブ。「こうした起業のエコシステムを東京でも根付かせたい」(山川准教授)。壮大な実験が、東京で始まろうとしている。

並木 厚憲 東洋経済 記者

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なみき あつのり / Atsunori Namiki

これまでに小売り・サービス、自動車、銀行などの業界を担当。テーマとして地方問題やインフラ老朽化問題に関心がある。『週刊東洋経済』編集部を経て、2016年10月よりニュース編集部編集長。

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