業界メガ再編で変わる10年後の日本 中堅・中小企業M&Aが再編の主役だ

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業界再編「五つの法則」から未来を予測

こうしたM&Aを促す業界再編には「五つの法則」があるとして、渡部氏は詳細に解説した。

一つめの法則は「どの業界も大手3~5社に集約されていく」である。たとえば、建設、商社、コンビニエンスストアなどの業界は大手4社に集約され、その業界シェアは約90%を占めるという。同じ業界で4社程度が寡占している状況が一番安定しており、居心地もいい。今後も上位3~5社の寡占化は進むと渡部氏は指摘する。逆に5社を超える企業が競争環境にある成熟業界では、再編がうまく進んでいないため、各企業が苦戦している。まだ4社前後に集約されていない業界は、今後、再編が起こると考えたほうがよいという。

二つめの法則は「上位10社のシェア10% 50% 70%の法則」だ。ある業界で売り上げ上位10社のシェアが10%になると成長期に入り、業界再編が始まる。それが50%になると成熟期を迎えて地域No.1企業が譲渡し、70%になると上位10社の統合が始まる。最終的に3~5社に集約され、その合計のシェアが約90%に到達したところで、国内の再編は終了すると渡部氏は話す。

そして、三つめの法則が、「6万拠点の法則」だ。これは拠点を必要とするビジネスで、業界全体の合計が6万拠点に達すると、業界再編が起こるというものだ。1拠点につき、約2200人をターゲットにするビジネスで、流通・小売、銀行、調剤薬局、運送会社、ガソリンスタンドなどが当てはまる。これから6万拠点に達し、これ以上拠点を増やしても効率的にならない業界については再編が進んでいく、と渡部氏は考えている。

四つめの法則が、毎年、全体の約10%のビジネスでシェア1位の企業が交代していくという「1位企業10%交代の法則」だ。寡占化が進む中で、トップ企業の交代はどの業界でも起こり得る。シェアが1位でも、決して安泰ではない。実際に毎年、全体の約10%の業界で1位企業が交代している。1位企業がその地位をキープできるのは、シェアが50%を超えてからだという。それまでに、いかにビジネスを進化させられるかどうか。それが企業にとって、重要になってきている。

最後の五つめの法則は、「Winner- Take-Allの法則」だ。これは50%のシェアをとれば半永久的に生き残っていくという、完成形の法則である。

こうした業界再編時代を生き残っていくための手段として、M&Aが必要であると渡部氏は強調する。

「これから日本の人口が減少していく中で、業界再編のスピードはより加速していくと考えている。本当の企業の価値とは、経営の”志”にある。いかに志のある企業同士が、手を結ぶことができるか。その如何が、新しい世界が開くかどうかを決める」と訴えた。

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