「人口減」でも限界集落を見捨ててはいけない 強靭な日本のために「山の知恵」は不可欠だ

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山村地域を残すべき理由とは?(写真:ばりろく / PIXTA)
本格的な人口減少時代を迎えるなか、消滅の危機に瀕している山村は多い。そうした山村は「非居住エリア」にして、市街地など「居住エリア」に人口を集中すべきだという議論もある。
だが、『小水力発電が地域を救う』の著者でもある中島大氏は、日本の将来のためにも、山村地域を残さなければいけないと提言する。どういうことか、解説してもらった。

縄文時代からあった「山から里へ」の流れ

近代の限界が叫ばれて久しく、日本の社会にもさまざまな問題が起こっています。山村の過疎化と都市部への人口の過剰な集中はその1つです。

「時代の流れだから仕方がない」

そう思われる方もおられるでしょう。現代社会はさまざまな問題を抱えていると言われます。大げさに聞こえるかもしれませんが、私はその理由の1つは、山の幸が絶えていることに関連していると思っています。

「海の幸と山の幸」

この言葉が示すように、昔の日本では、自然からの富は海からと同様、山からもやってきました。ところが、現代では海からの富は盛んにやってくるものの、山から富が社会へやってくることはあまりなくなってしまいました。

水田農業以前の縄文時代には、食料にせよ道具の材料にせよ、人の生活に必要なものは海と山から手に入れていました。弥生時代になり水田農業が始まってからも、山の中に暮らす人はいて、木材やキノコなどの社会に必要なものを手に入れ、山から平野の村へと持ってきていました。山の中には人々にとって価値のあるものがあり、山から里へというものの流れがあったわけです。

特に木材は重要でした。木材は家などを建てるのに使う建築材として必要だっただけでなく、近代以前では薪(まき)や炭として使われており、燃料としても必要とされていたからです。つまり、人々の生活の煮炊きに使ったり冬場の暖を取ったりするためのエネルギーは、山から里へともたらされていたわけです。

こうして、資源は山から里へと移動し、おカネは里から山へと移動して、山で暮らす人々の生活を可能にしていたのです。

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