プロ野球「春季キャンプ」が宮崎に与えた貢献 2018年の12球団のキャンプ動向を探る<上>

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「これは” おもてなしシート”と言います。キャンプの良い席はどうしても朝早くから駆けつける地元のお客様に早い者勝ちでおさえられがちです。そこで福岡など遠方のお客様にもお席を確保するために、土日に限り2000円の指定席を販売したわけです。

” おもてなしシート”のお客様には、キャンプグッズと宮崎県の名産など2000円相当のお土産をお持ち帰りいただきます。雨天中止の場合は、チケットを払い戻しますが、お土産はそのままお渡しします。あくまで、遠くのお客様の席を確保するのが目的です」

ソフトバンクは2月1日から1カ月、場所を移動することなく腰を据えて宮崎で練習をしてきた。これも圧倒的な人気の一因だろう。

ソフトバンク公認グッズも販売されていた(筆者撮影)

動静をリアルに伝える巨人、人気上昇中のオリックス

巨人は宮崎市南部、海に面したKIRISHIMAヤマザクラ宮崎県総合運動公園で春季キャンプを行っている。この地でキャンプをして今年で60年になる。

規模の大きさ、施設の充実ぶりではこのキャンプ地の右に出るものはない。本格的な球場が3つあり、サブグラウンド、室内練習場も充実している。ここで1~3軍がキャンプを張る。広大な敷地のため、キャンプ地内をシャトルバスが走っている。またレンタサイクルも完備されている。ファンの数もソフトバンクに次いで多い。

巨人キャンプは広大なため、ファンがお目当ての選手を見つけやすいように、選手個々の動静をキャンプ特設サイトで、オンタイムで紹介している。「〇〇投手は、今ブルペン」「〇〇選手は、これからサブグラウンド」……。ファンは、スマホを見て移動する。選手の動静は、各施設に配置されたアルバイトスタッフが逐一本部に送信している。

今年でいえば、1軍は2月14日で宮崎での一次キャンプを打ち上げ、沖縄県那覇市の二次キャンプに移動したが、そのあとはメインのサンマリンスタジアムは、2軍選手が使用する。こういう形で2月終盤までキャンプを見ることができるようにしている。

オリックスは宮崎市中南部の 宮崎市清武総合運動公園で2015年からキャンプを張っている。2016年にはメイングラウンドのSOKKENスタジアムに隣接して第二球場も完成。この年から、1、2軍が一緒にキャンプをしている。メイングラウンドの三塁側の上段からは、第二球場の様子を見ることもできる。これはぜいたくなことだ。

まだ年数が浅いこともあって、ファンの数はソフトバンクや巨人には及ばないが、タクシー運転手は「今年はオリックスキャンプへ行く回数が増えた」と話してくれた。

宮崎市の3球団のキャンプはすべて1、2軍(3軍)が合同のフルセットだ。キャンプの地元の支援は宮崎市観光協会が中心的役割を担っている。

前出の野尻スポーツランド推進課課長はいう。

「各球団のサポートは”協力会”という地元組織が担当しますが、3つの協力会の会長はすべて宮崎市長です。そして、実動部隊は市や観光協会の職員です。3つのキャンプ地の売店は協力会で設営し、来場者数実績に応じて出店業者を割り振っています。売店の売り上げから、店舗の設営費などを出しています」

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