ホンダCMが「宗一郎少年」の夢を体現したワケ 2月後期作品別CM好感度ランキング上位30

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そういった視点でもHondaJetは存在そのものがホンダならではのオリジナリティーを持っており、こうした製品を中心とした企業ブランディングは同社の十八番だと言えよう。

なかでも思い起こされるのは「Do you have a HONDA?」をコピーとした1999年開始の一連の企業CMだ。ザ・ハイロウズの『日曜日よりの使者』をBGMに、地下鉄の出口から『ASIMO』の前身となる自立歩行人間型ロボット『P-3』が現れる。この曲は2005年まで採用され、「この曲を聴けばホンダを思い出す」と言えるくらい、強く同社と結びついていた。

題材としてはロボットや自動車だけにとどまらず、ぬかるみにはまるモトクロスバイクや女子高生からの声援を浴びながら耕耘機を動かす男性などバリエーションに富んだ。さらに2007年には「Hondaの音がする。」「世界が生きている。」をコピーに自動車やジェット機、除雪機といった同社製品のエンジン音などをリレー式につなぎ、ベートーベンの『歓喜の歌』を奏でたCMでも好評を博した。

そのほかにもASIMOがダイナーで配膳や空いた食器の回収をするもの、さらにはケーブルカーに乗り遅れてしまうものなど、これまでにヒットした同社の企業広告は“ものづくり”の本質を追求し続ける企業らしく、シンプルに製品を中心に据えた表現が多い。

「Go,Vantage Point.」に込められた意味

「二輪・四輪・パワープロダクツといったさまざまな製品を通じて、単なる移動手段ではなく、自由で楽しい移動の提供を目指す」という企業姿勢・DNAをCMからもうかがい知ることができる。長年にわたって人間尊重・人間研究を続けてきたモビリティ企業だからこそ、今、「Go,Vantage Point.」というメッセージを発信するに至ったのだという。

1917(大正6)年、静岡県浜松市で開催されたアクロバット飛行ショー。当時10歳だった本田宗一郎少年を強く突き動かした飛行機への夢はホンダ創業当初からの悲願となり、ついにHondaJetを世界一の座に導いた。

まさに「夢を追い続ける力」の象徴というべきこのCMを本田宗一郎氏が目にしたならば、どのように感じるのだろう。そんなことを考えると、ホンダが掲げる「The Power of Dreams」という言葉が胸に突き刺さる。

関根 心太郎 CM総合研究所 代表

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せきね しんたろう / Shintaro Sekine

1973年生まれ。1999年株式会社東京企画/CM総合研究所に入社。システム開発・データベース構築の責任者を経て2014年より現職。消費者3000人を対象としたCM好感度調査を中心に、テレビCMの広告効果測定および研究分析を実施。このほか企業へのコンサルティングや情報提供を通して、広告活動の最適化に向けた課題解決のサポートを行っている。

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