喫煙と肺がんの実はよく知られていない関係 タバコは一体何が体によくないのか

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ニコチンはHDLコレステロール(善玉コレステロール)を減少させ、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)を増加させます。ご存じのとおり悪玉コレステロールは血管内に沈着して動脈硬化を起こしますから、これもまた血管を傷める原因になります。

タバコのさまざまな作用で正常な血流が乱されると、交感神経が活発になり、体を正常な状態に戻そうとします。その際に血圧が上昇するので、弱った血管に強い圧力がかかり、どんどん血管はボロボロになっていきます。

タバコで怖いのは肺ガンだけと思っている人は、ぜひ認識を改めてください。血管の障害で恐ろしいのは、血管が完全に詰まってしまったり、裂けてしまったりすることです。その場合、かなりの確率で生命が脅かされます。

血管が詰まる症状としては、心筋梗塞や脳梗塞がよく知られています。動脈硬化を起こして柔軟性が失われた血管にコレステロールなどが沈着して流路が狭まり、そこに血栓が流れてきたりすることで血流がストップして起きます。場所が心臓や脳ですから、すぐに治療しないと生命が失われます。

そのほか、突然死の代表格である大動脈解離も血管の病気です。これも喫煙などで血管が繰り返し痛められることが原因となります。

肺がスカスカになって膨張してしまうCOPD

「COPD」という病気をご存じでしょうか。正式名称の「慢性閉塞性肺疾患」という病名を聞いても、ピンとこないかもしれません。この病気はそれほど世の中に知られていないのです。

人気テレビ番組「笑点」の司会者だった桂歌丸師匠がかかっている病気というと、少しは関心をもってもらえるかもしれません。テレビで見る歌丸師匠の姿はいかにも苦しそうで、「がんばってください」と声をかけたくなります。

COPDとは、簡単にいうと「肺がスカスカになって膨張してしまう病気」です。

タバコの熱や煙、タール、一酸化炭素などにより、肺の細かいメッシュが破壊されてしまい、使い古したスポンジのようにスカスカになるのがCOPDです。そうなってしまうと、吸った空気が肺に溜まって出すことができません。溜まった空気を吐き出すことができないので、新しい空気を吸えなくなってしまいます。とても苦しくてつらい病気なのです。

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