自衛隊は、なぜジブチを重視しているのか 海上自衛隊トップに直撃インタビュー

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――次に日本の近隣諸国とのパートナーシップについて伺いたい。日本は特に東南アジア諸国とのパートナーシップを構築することに熱心だ。海上自衛隊はフィリピンに練習機TC-90を無償譲渡した。さらに、『ジェーンズ』の取材によると、マレーシアは日本にP-3C哨戒機の無償提供を要請した。海上自衛隊は、先ほど述べられたような限られたリソース(資源)の中で、こうした要請にいかに対処していくのか。

東南アジアのパートナー国への日本の装備品の供与等については、今さまざまな検討がなされている。まだマレーシアにMPA(海上哨戒機)を供与するといったような具体的な話はないと理解している。ただ、マレーシアを含め、諸外国からそのような要望があることは聞いている。それは日本国政府として、検討されていくことと思っている。

――それは東南アジア諸国への寄付や無償譲渡という形になるのか。

どういう形になるかを含め、今後検討されることとなる。P-3Cについて言えば、日本は自国の安全保障のために今も使っている。自国の防衛に影響を与えずに、装備品の供与をどのように実施していくかについては、他省庁や民間企業を含め国家的に考える必要がある。

ただ、すでに行っていることとして、フィリピンに対し、海上自衛隊のTC-90を今年3月までに5機渡すことになっている。すでに2機を供与したが、残り3機を3月中に供与する予定だ。供与した2機のTC-90は、フィリピン海軍がすでに使用している。フィリピン海軍のパイロットの教育も海上自衛隊が徳島の教育航空群で行っている。

なぜジブチでの活動が重要なのか

――アフリカでの海上自衛隊の活動について伺いたい。ジブチでどのような活動をしているのか。なぜジブチでの活動が重要なのか。

すでに8年を超えてソマリアの海賊対処のために、海上自衛隊から護衛艦とP-3Cを派遣し続けている。ジブチはその拠点として活用されている。海賊については、日本だけではなく、国際的な取り組みによって数は確実に減少してきた。しかし、周辺諸国の貧困など基本的な問題がまったく解決されておらず、海賊行為がなくなるとの見通しは立っていない。当面、海上自衛隊は引き続き、艦艇と航空機を派遣する予定にしている。この意味でも、拠点としてのジブチは今後とも重要だと考えている。

海上自衛隊トップの村川豊海上幕僚長(写真中央)。後ろに見えるのは、日露戦争で連合艦隊司令長官として指揮を執った東郷平八郎の写真。2月14日防衛省で撮影

――海賊対処活動についていえば、もう1つの海賊がはびこっている地域は南シナ海とスールー海だ。海上自衛隊はソマリア沖・アデン湾で海賊対処活動を実施しているが、これらの海域でも活動を行う計画はあるか。

日本にとって、東シナ海から南シナ海、インド洋、ペルシャ湾に至るシーレーン(海上交通路)は極めて大事だ。その中で、スールー海などでの海賊も1つの大きな関心事だと思っている。たとえば、フィリピンに供与したTC-90が、周辺海域の監視などにも使用されれば、広い意味で海賊対処にもつながるのではないかと思っている。

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