21世紀の「日米貿易戦争」で勝つのはどちらか 日本が国際貿易における新たなリーダーに?

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プレストウィッツ氏はさらにこう指摘する。「トランプ大統領がTPP再加盟に向けた交渉を真剣に考えていると見えれば、こうした反対派が再び表面化してくるだろう。ただ、トランプ大統領が何を考えているかわかる人はいない。本人すらわかっていないかもしれないのだから」。

トランプ大統領の心がどう動くのか誰もわからないのであれば、日本政府も当然心配になるはずだ。今のところ日本は、米国との貿易における黒字についてバッシングを受けていない。その理由の1つはトランプ大統領が安倍首相を好いているからであり、もう1つは北朝鮮や中国との関係における日本の地政学的な役割がある。

日米の緊張感が再び高まる可能性は?

「しかし、日本は注目されている」と、ソリス氏は警告する。その兆候は日本における自動車に対する非関税障壁を批判した最近の報告書にも見られる。日本はすでに米国のTPPからの撤退により損害を被ってきた。

鉄鋼類に課そうと検討されているような関税のたぐいは、日本にもさらなる影響を与えることになるのだ。北米自由貿易協定(NAFTA)の交渉が失敗すれば、同協定に基づいてメキシコとカナダに工場を設立した日本の企業に多大な影響を及ぼすだろう。

いずれにせよ、日本が戦火に巻き込まれることは避けられなさそうだ。ただ今後、貿易戦争が拡大しても、同盟が終結することは考え難い。安全保障の側面は依然として最重要かつ強いものだからだ。加えて安倍首相は、日本に対する安全保障上の脅威を強調するトランプ政権に絶大な信頼を寄せている。

ただし、貿易戦争は安倍—トランプ関係を緊張させることになり、安倍首相がトランプ大統領の「お気に入り」であり続けることは難しくなるかもしれない。

安倍首相が自分にとって「いいお友だち」ではなくなったとトランプ大統領が考えた場合、1980年代の緊張の時代に戻ってしまう可能性も出てくる。1つ1980年代と決定的に違うのは、役割が「逆転」していることだ。これが世界貿易においてどういう影響を及ぼすのかは、未知数ではあるが。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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