iCloudデータ、「中国移行」に懸念の声 当局は反体制派取り締まりのため権限悪用?

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アップルは中国データセンターへの切り替えについて、中国人顧客に対し、電子メール及びいわゆる「プッシュ通知」の形式により警告し、iCloudの利用をやめて端末のみに情報を保存する選択が可能であると告知している。今回の変更はアップル製端末の国設定を「中国」にしているユーザーのみに影響し、「香港」「マカオ」「台湾」を選んだユーザーは対象とならない。

アップルではiPhone端末の使用に当たりiCloudアカウント設定を必須とはしていない。だが設定の際にユーザーがiCloudを有効にすると、デフォルト設定ではiCloud上にiPhoneのバックアップが自動的に生成される。

中国人ユーザーに関して、デフォルト設定でiCloudをオプトアウト(利用しないとの意思表示)ではなくオプトイン(利用するための意思表示)に変更するかどうかという点について、アップルはコメントを拒否している。

同社によれば、顧客が新たなサービス利用条件に同意するまでは、その顧客アカウントを中国データセンターに移すことはないが、現行ユーザーの99.9%以上がすでに新条件に同意しているという。

これまでのところデータ提供には慎重

これまでのところ、アップルが中国人ユーザーのデータを当局に提供した例は非常に少ない。アップルが公表している透明性に関する報告書によれば、2013年半ばから2017年半ばにかけて、中国当局から176件の請求を受けたものの、顧客アカウントのコンテンツを提供したことはないという。対照的に米国顧客アカウントについては、政府機関からの請求8475件のうち2366件に応じているという。

これらの数値は中国のサイバーセキュリティ関連法が施行される前のものであり、米当局者が中国籍ユーザーに関するデータを請求する特別国家安全保障請求は含まれていない。アップルは他企業同様、法律の規定により、こうした請求対象についての情報開示を免れている。

アップルでは、中国に新設したデータセンターからデータ提供するよう請求があった場合には、透明性に関する報告書に反映させるとしており、また[アカウントを特定しない]「バルク(一括の)」データ請求には応じないと述べている。

人権活動家は、雲上貴州大数据産業発展のような国家統制下にある企業とこれほど緊密な関係を結ぶことにも懸念があると言う。

ヒューマン・ライツ・イン・チャイナ(中国人権)のエグゼクティブ・ディレクター、シャロン・ホム氏は、中国共産党は合弁事業内の党委員会を通じてアップルに圧力をかけてくる可能性があると語る。ここ数年、こうした企業内の委員会は、外資系企業の意思決定に対する影響力を強めつつあるという。

(Stephen Nellis and Cate Cadell 翻訳:エァクレーレン)

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