大赤字!通販「ベルメゾン」が苦戦する理由 迷走の千趣会、ファンド出資でどうなるのか

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千趣会によると、複数のファンドなどから再生案件を持ちかけられる中、「レビックによる提案が一番理にかなっていた」として同ファンドに決めた。銀行からの借り入れや社債調達といった負債を抱える方法以外の資金調達法を模索する中、既存普通株の希薄化などが避けられる優先株の発行という決断に至ったという。

千趣会はレビックの力を借り、マタニティやベビー用品、インテリア、大きいサイズなど6つのカテゴリに商品分野を絞り、再度専門店化を進めるとしている。同時に商品開発にも力を入れるとしており、「商品開発に若手を中心に人員を戻しているほか、外部からも人を入れている」(同社)。

1年で黒字化という「バラ色」すぎる計画

カテゴリ内のアイテムも減らし、さらにアイテム内の商品数にも上限を設ける。商品開発、販売スパンも見直して、短期間で売り切るようにするという。これにより、今2018年は売り上げこそ増えないものの、見切り品販売などが減ることで16億円の営業黒字を確保しようとしている。

が、これはあまりにもバラ色のシナリオだ。そもそも、5年かけて徐々に失われてきた差別化要因や商品開発力を一気に取り戻すのは難しい。カテゴリを6つに絞ったところで、それぞれの分野には、力を持つ専門業者がいるわけで、短時間でこうしたライバルに付け入るのは容易ではない。

これは、千趣会だけでなく、セブン&アイ・ホールディングス傘下に入ったニッセンなどにも言えることだが、中規模通販は現在、とても差別化しにくい立ち位置にある。

「小規模の小売りであれば、利用者の要望に合わせてカスタマイズするなどができるが、中規模がやるにはコストがかかりすぎる。一方、プラットフォーム型のように、顧客データとテクノロジーを駆使して、それぞれにあった商品や使い方を提案することもできない」(田中教授)

こうした中で生き残っていくためには、「たとえば、同じ小売業であっても、メルカリのように、ルールが違うゲームを作り出すしかない。商品やサービス、使い勝手で差別化を図るといった小手先のことだけやっていては、2、3年後に行き詰まるのは目に見えている」(同)。

ただ、こうした取り組みには大胆な視点や発想の転換が必要だ。今の事業の延長線上ではなく、枠から飛び出すほどの戦略を打ち出さない限り、千趣会の復活は難しいのかもしれない。

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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