頼りにならない上司にありがちな残念思考 事実を見極めず、部下の予測を真に受ける

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たとえば、ある商社で、部下から次のような相談を受けたとします。

「お得意先が、P商品の仕入れ価格を10%値下げしてほしいと言ってきています。一度断ったのですが、引き下がってくれません。実は先日、私のミスで納品が遅れてすごく怒られたことがありました。そのとき、競合のC社より当社の商品が高いと言われていたんです。そのときはなんとか収めましたが、今回のことをきっかけに、C社の商品に切り替えられてしまうかもしれません。うちも、値下げをお願いできないでしょうか」

この相談に対して、今後の販売継続のため、かつ納期遅延の謝罪の意味も込めてP商品を値下げすべきなのでしょうか。

いえ、この場合は、結果的に値下げをすることになったとしても、この段階では値下げの判断をすべきではありません。その理由を3つにまとめてみます。

値下げの判断をすべきではない理由

①因果関係を「予想」してしまっている

問題を正しくひもとくためには、現状をきちんと把握することが不可欠です。

その視点で今回の相談を見てみると、

「納品ミスやC社との値段の差によって、値下げ要求をしてきている」

という部下の相談には、実は根拠がありません。

今回の値下げ要求に、納品ミスのペナルティの意味があるかどうかはわかりませんし、また競合C社が類似品を当社より安く売っているのは事実でも、それが関係しているかどうかもわからないのです。

②今後の展開も「予測」にすぎない

部下は、「値下げしないとC社の商品に切り替えられてしまうかも」と言っていますが、実はこれも不確実な情報です。たとえば得意先が、

「C社より安くしないとP商品は販売しない」

と言ってきたのであれば、対策をしなければいけません(もちろん撤退も一案です)。しかしここで登場した情報だけでは、判断することはできないのです。

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