日本株はトランプ保護主義で再下落するのか 袋小路に陥った米トランプ政権をどう見る?

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先週の米国発の再度の市場波乱は、一つの材料はジェレミー・パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の議会証言だった。議長は2月27日(火)には下院金融サービス委員会で、3月1日(木)には上院銀行委員会で、それぞれ証言を行なったが、下院証言では、個人的な見解だとしながらも、「経済見通しは昨年12月以降強まっている」と述べた。このため、昨年12月のFOMC(米連邦公開市場委員会)での金利見通しである、今年3回の利上げシナリオよりも、利上げ回数が多くなる(年4回になる)との思惑が生じたわけだ。

ただ、そうやって、新任議長のちょっとした言葉の端々を捉えて、市場が騒ぐのは、投機筋のいつもの「お家芸」のようなものであるし、議長が「個人的な見解」としたように、3月20日(火)~21日(水)のFOMCでは、公式の金利見通しは年3回に据え置かれたままだとの観測も有力だ。したがって議長証言の内容は、特に懸念視する必要はないだろう。

米エコノミストたちも懸念していた「通商問題」

むしろ、それ以上に騒ぎになっているのは、米国のトランプ政権の保護主義的な姿勢だ。具体的には、3月1日(木)に、ドナルド・トランプ大統領は、鉄鋼輸入品に対し25%、アルミニウム製品に対して10%の追加関税を課す方針を表明した。実施は今週からとされている。

こうしたトランプ政権の保護主義的な姿勢は、特に今始まったことではないので、先週いきなり市場が大いに悪材料視したことには違和感がある。ただ、筆者自身の反省も含めて言えば、保護主義の悪材料化を、やや軽視してきてしまったのではないか、と思う。

実際、昨年11月に取材のため訪米した際は、筆者は、純粋に経済分析を職務として行なっているエコノミストたちとも対談した。彼らの多くが、話を始める際に、「では、NAFTA(北米自由貿易協定)やTPP(環太平洋経済連携協定)を含めた通商問題、政権の保護主義的な政策から、議論を始めようか」と語ったので、驚いた。

当方としては、それより金利上昇が起こった際の住宅や自動車などのセクターへの影響や、減税策の行方とその効果、長期続いている米国景気拡大の持続性、雇用市場の先行きと賃金インフレの可能性、それらを受けたFRBの金融政策などが、まず議論の対象なのではないかと感じたが、エコノミストの多くは、「いや、通商問題が最大の注目点だ」と譲らなかった。

今にして思えば、そうした第一線のエコノミストの問題意識をもっときっちり踏まえていれば、と考える。

では、トランプ政権の保護主義(今回の追加関税だけではなくNAFTAの修正なども幅広くみて)のどんな点が、米国経済や市場にとって問題とされているのか、整理してみよう。問題点は主に以下の4つだ。

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