「らくらく連絡網」は他のSNSと何が違うのか イオレの吉田直人社長にロングインタビュー

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小林:確かに、「ママ友とはできるだけFacebookでつながりたくない」といった声を聞いたりしますね。幼稚園や小学校を通しての関係だったのに、そこからさらに私生活や勤務先のことをお互い知ってしまうと、変に気を遣っちゃったりしますもんね。

吉田:結局、当社の中心となるターゲットは「親密過ぎない目的集団」で、そういった団体は規模が大きくなりがちです。実際、「らくらく連絡網」の登録団体数はさほど変化していないのですが、会員数の増加は顕著です。なぜなら、規模の大きな団体の加入が目立っているからです。LINEなどを通じて、小規模の比較的親密な人たちで話し合って決めたことを、「らくらく連絡網」で正式な通達として全体に伝えていくという使い分けを行っているのでしょう。

小林:なるほど。そういった明確な線引きができているのですね。

吉田:団体を統率する立場の人にしても、「らくらく連絡網」だと「入会しておいてね」と気軽に頼みやすいわけです。それでいて、当社は入会時に詳細なプロフィールについて記入していただいていますから、LINEなどと違って非常に濃密なデモグラフィックデータ(消費者の属性情報)を蓄積できます。その反面、FacebookやLINEと違って頻繁に閲覧するわけではないため、単に広告を載せればそれで効果が上がるというものではありません。すごく便利ではあるけれども、ビジネスとしてなかなかマネタイズできないというジレンマに当初は苦しみました。

小林:それでも、現在はサービスの利用を基本的に無料とし、クライアント企業から広告料を受け取るというビジネスモデルを確立されているわけですね。

吉田:マネタイズに苦慮していた矢先にアドテクが出てきたことによって、私たちは生き残ることができました。デモグラフィックデータに基づいて、クライアントが本当に届けたいターゲット属性へ的を絞って広告を配信することが可能になったのです。

たとえば、「来春卒業予定の理系大学生に採用広告を配信したい」というのがクライアントの希望だったとしたら、一般的なDSP(広告クライアントのための出稿プラットフォーム)ではネット上での閲覧履歴などをもとに該当しそうな人を推定して広告を打つことになります。これに対し、当社のDMP(データ管理プラットフォーム)を利用すれば、「らくらく連絡網」の登録情報から該当する人を抽出できますから、確実にターゲットに配信できるのです。そうした特長から、当社のそれは特に求人広告などに有効です。

小林:2017年7月に凸版印刷と業務資本提携を結んだのも、デモグラフィックデータをさらに活用したビジネスを進めるためですか?

吉田:ええ。「らくらく連絡網」と凸版印刷の電子チラシサービス「Shufoo!」のビックデータを基盤としたインターネット広告サービスを共同で進めていく方針です。凸版印刷はありとあらゆる企業のマーケティング部門など、当社が自力で開拓するのはまず不可能なところとも接点があります。

その一方で、出版業界の衰退に対して非常に危機感を抱いているようで、こうした新規ビジネスへの取り組みに意欲的です。2社で共同のDMPを用いてさらに精度の高いターゲティングを行うことで、人材採用や顧客獲得などの広告効果を最大化していくというのが連携の狙いです。

決済機能を付ければ、海外展開も視野に入る

小林:今後は、どういった層を開拓して会員数の拡大を図る方針ですか?

吉田:すでに若年層にはかなり浸透しているので、今はPTAのさらなる開拓に目を向けています。また、リタイア前後の世代への普及にも力を入れたいですね。ひと昔前とは違って、そういった層も抵抗なくスマートフォンを使っているでしょうし、開拓の余地は大きいと思います。

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