ビジネスホテル、満室御礼でも伸び悩むワケ 競争激化と人件費高騰で業績はすでに踊り場

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装置産業であるホテルにとって、満室状態になった以上、利益を増やすためには単価を上げるしかない。だが、2016年から2017年にかけて、ビジネスホテルの開業が大幅に増えたことに加え、関西では民泊などにも客が流れた。各社は稼働率の維持を優先したために、これまでのように単価を上げることができなかった。

人件費や先行投資を吸収するのがやっと

その結果起きたのが、高騰する人件費や先行投資を吸収するのがやっとという決算状況だ。人手不足のあおりを受けて、清掃などの人件費や建築費が高騰。「新店開業による地代家賃や備品、消耗品が上がっている」(東横イン)。アパグループもホテル事業の売上高は約17%伸びたが、利益の伸びは2%にとどまった。

懸念されるのはこうした状況が持続可能なのかどうかだ。不動産サービス大手CBREの調査によれば、2020年までに東京や大阪など8都市のホテルの客室数は2016年末比で32%増える見通し。そのうちの9割が宿泊に特化したタイプのため「差別化が重要になる」(ホテルを担当する土屋潔ディレクター)。

ただ、急な方向転換は難しい。アパグループは従来どおりの拡大戦略を続ける。大型のシングルベッドやテレビを標準仕様とするほか、2019年2月に国会議事堂前で高級仕様のホテルを、同年秋に横浜で約2300室の大型ホテルなど「ブランド力アップを見据えたホテルの展開を図る」(会社側)。

東横インも従来の「清潔・安心・値頃感」という方針を追求するという。

CBREの土屋氏は「2017年は転換点だった」と説明する。2020年を越えた先に誰が生き残るのか。好調なうちに各社は知恵を絞る必要がある。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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