1日15万個!「551蓬莱」の豚まんは驚異的だ 日本で1日に起きていることを調べてみた

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この本の面白いのは、単に数字が上げられているだけでなく、どうして大阪では肉まんなどという曖昧な言い方ではなくて豚まんという名前なのか、といったような、日本人なら当然知っておくべきファクトも鋭く付け加えられていることである。もちろん、ここだけでなく、すべての項目についてそうなっている

数字によっては、自分が抱いてきたイメージと同じかどうか個人差があるだろう。たとえば、同じく第4章の⑧『香川県民が1日に食べるうどん』は、さて、どれくらいだと思われるだろう。答えは男性が0.85杯、女性が0.41杯である。わたしなどは、えらく少ないのに驚いた。うどん県を名乗るからには、せめて1日1杯は食べるべきではないのか。しかし、考えてみると、男性は1週間に6杯も食べているのだから十分なような気もする。

豚まん販売数やら、うどん杯数やら、考えたところでわかりそうにないものもあるが、フェルミ推定的に考え、おおよその数を推定できるものもある。フェルミ推定、ご存じであろうか。「実際に調査するのが難しいようなとらえどころのない量を、いくつかの手掛かりを元に論理的に推論し、短時間で概算すること(ウィキペディア)」で、原子核反応の研究によりノーベル物理学賞を受賞したイタリア人科学者、エンリコ・フェルミが得意としたのでこの名がある。

たとえば、第1章の⑧『日本列島の1日』の『1日あたり、全国の鉄道利用者』、第2章『日本社会の1日』の③『1日に、病院で新たにがんと診断される人』、㉔『1日に、日本国内で送受信される迷惑メール』、第3章『日本人の1日』の③『日本人1人あたり、1日に飲むお酒』、⑩『コンビニ1店あたり、1日の客数と売上高』などは、フェルミ推定的に考えて答え合わせをしてみると面白い。(解答は最終ページに)

数字を知ると感じられるリアリティ

フェルミ推定で完全な正解を出すことは難しいが、2分の1~2倍の範囲内の答えが得られたら上出来だ。たいそうな言い方になるが、その程度の推量ができるかどうかで、該当する内容についてある程度のリテラシーがあるかどうかがわかるのである。では、第2章の①「1日に、生まれる赤ちゃんと亡くなる人」はどうだろう。

『日本で1日に起きていることを調べてみた: 数字が明かす現代日本』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

正解は、生まれてくる赤ちゃんが2680人で亡くなる人が3541人である(2016年の統計)。さて、おおまかにあてることができただろうか。この数字を引き算すると、日本の人口が1日あたり861人ずつ減っていくことがわかる。こうすると、人口の減少をえらくリアリティを持って感じることができる。

ホンマですか、と言いたくなる数字もある。『1日に、発生する万引きによる被害額』と『1日に、発生する振り込め詐欺による被害額』などはそれにあたる。前者は12億6000万円で後者が1億円。報道などの印象では、なんとなく同じくらいかという気がしていた。実際は万引きの方がはるかに多く、年間では4600億円にも達するとは、どれだけ件数が多いかということである。

他にも、『日本の女子高生が1日にスマホを使う時間』が6時間6分というのには驚いた。さらに、カラスの行水型入浴人間としては、『日本人の1日の平均入浴時間』が男性約27分42秒、女性約32分55秒というのには腰がぬけた。みんなとってもお風呂が好きなのね。

全54項目+4つのコラム。どれもが、へぇそうなんや、とつぶやきたくなるような内容になっている。この本、軽い感覚だが、侮るなかれ。読み終わった時、あなたの眼前に現代日本の姿がおぼろげに、あくまでおおぼろげにではあるが、立ち現れてくる。

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