「子ども被災者支援法」が骨抜きの危機 原発事故被災者や自治体が、国に“異議申し立て”

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子どもを守るために自主的に避難した住民や、福島県外などこれまで国による支援が手薄だった地域の住民をも対象とする考えを盛り込んだ同法では、「一定の基準以上の放射線量」を元にさまざまな施策を決めるとしている。その項目として、生涯にわたる定期的な健康診断や医療の確保、支援対象地域からの移動に対する支援や移動先での住宅確保施策などが支援法に盛り込まれている。

しかし、政府による基本方針案では、一通りの支援が実施される支援対象地域は、いわき市など福島県の「浜通り」および福島市や郡山市など「中通り」の33市町村に限定され、県内の会津地方がそっくり外される形になっている。

また、追加被ばく線量が国の定めた年間1ミリシーベルトを超えることから「汚染状況重点調査地域」に定められている茨城県や栃木県、千葉県などの自治体も、支援対象区域に含まれていない。これらの地域は政府が決めた一部の施策だけが実施される「準支援対象地域」に区分けするとされている。

「県境にとらわれることなく、支援対象地域を指定するとともに、福島県と同等の支援施策を講じること」(栃木県)。

「(土壌の除染を実施する)汚染状況重点調査地域と支援対象地域が異なることは、国が進めてきた放射能汚染対策の一定の基準を根底から崩すことになる」(茨城県守谷市)。

「健康管理および医療支援策を、汚染状況重点調査地域でも推進すること」(千葉県柏市など東葛地区の9市)。

自治体が政府に提出した意見の内容はきわめて正当で切実だ。

流山市の阿部はるまさ市議はこう指摘する。

「東葛地区では、空間線量が福島県内よりも高いホットスポットが点在している。加えて、原発事故直後には、福島県内に匹敵するレベルの放射性ヨウ素のプルーム(雲)が流れてきたことが判明している。だからこそ、支援対象地域に定めたうえで、健康調査を実施する必要がある。福島県外でもきちんとした施策を講じることは、福島県内での施策充実にもつながる」

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