平昌五輪で米朝に「勝った」文大統領の根性 「米朝会談」は幻に終わったが・・・

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韓国の文大統領の横に立つイヴァンカ米大統領補佐官、後ろには金英哲・朝鮮労働党副委員長の姿が(写真:Murad Sezer/ロイター)

平昌オリンピックでは連日メダルをめぐってスリリングな闘いが繰り広げられていた一方、韓国、北朝鮮、米国、日本も人知れず「外交合戦」を繰り広げていた。ただし、その結果はまだハッキリとは出ていない。

オリンピック閉会式を迎えようというその頃、韓国は、米国と北朝鮮間の会談を実現させることに力を注いでいた。米朝双方から明確な前提条件なしに会談を受け入れるという合図が出されたからだ。だが、これはまだ非常に不安定なものであり、いつなんどき「なかったこと」になるかわからない。

自国のスタンスを覆したと見られたくない

韓国の文在寅大統領は、平昌オリンピックをもっと大きな目的の手段として使おうと考えていた。これまで事実上棚上げになっていた政策を再開し、北朝鮮との新たな関係への扉を開こうと考えていたのだ。文大統領とその側近たちは、南北対話の実現に率先して取り組むべきだと長い間主張してきた。それにより半島における戦争の危険を緩和することができる、と。

韓国政府首脳陣は、米国を北朝鮮との平行協議に導くべきだとも主張している。ただし、文大統領はこうしたプロセスを慎重に進めなければならない。米国との明らかな関係崩壊や、国内での政治的反発を避けなければいけないからだ。

一方、北朝鮮と米国は、それぞれ理由は大きく異なるものの、どちらも話し合いに入ることに対して不安を抱いている。これまで自国が貫いてきたスタンスを覆したように描かれるようであれば特に、だ。つまり、北朝鮮側は核兵器の開発プログラム終了に持ち込まれるような交渉を望んでいない一方、米国側はすべての会談は非核化への合意をゴールとして始めなければいけない、と考えている。

北朝鮮政権は、金正恩朝鮮労働党委員長が新年の辞で合図を送ったように、文政権による絶え間ない呼びかけに答え、何カ月にも及ぶ真剣な対話を行うという明らかな決断を示している。

北朝鮮にとって、話し合いのインセンティブはいくつもある。

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