今、地域が「ビジネス」の主役となる理由 企業誘致には「発掘」と「発信」が必要

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―今、地域で生まれつつある新たな動きとは何でしょうか。

鈴木 インバウンドを中心とした観光産業や航空機部品産業、医療・バイオ関連産業など地域の特性を活かした成長性の高い新たな分野に挑戦する取り組みが生まれつつあります。また、環境エネルギーやヘルスケア・教育サービス、さらに第4次産業革命関連などの分野も進んでいます。これには地域におけるリーダーシップと地元の産官学「金」の連携が不可欠となります。自治体と産業界だけでなく、地域の知的拠点である大学や地域金融機関の協力が必要となっているのです。こうしたことを実現するためにも、地域に根差した人が旗を振る時代になってきたと言えるでしょう。

―企業にとって地方の魅力とは何でしょうか。

すずき・たかお
1944年生まれ。東京大学法学部卒。67年、通商産業省(現・経済産業省)入省。資源エネルギー庁石油部長、通商産業省環境立地局長などを務めた後、2012年、財団法人日本立地センター(現・一般財団法人日本立地センター)理事長就任。15年三菱ふそうトラック・バス株式会社会長から相談役に

鈴木 企業にとって大事なのは人材です。IT化の進展と交通通信網が発展し距離的な制約が少なくなった今、海外と比べ人件費負担が多少高くても、生産性が上がれば最終的な付加価値ベースで考えれば労働力にそれほど差は出ません。むしろ質の面で勤勉な日本の労働力は再評価されるべきでしょう。海外と比較して立地、労働条件で差がなくなってくれば、企業はもう一度日本に戻ってきます。しかもIoTやAIといった先進的な技術のトライアルをするには国内のほうが海外よりも都合がいい。そこに医療・教育機関を備えたコンパクトシティづくりをつなげていけば、新しい地域活性化のかたちが見えてくるはずです。

―これから地方自治体は企業誘致でどこに力を入れるべきでしょうか。

鈴木 今は企業誘致と地域資源の活用を総合した地域主導の成長戦略が重要になっています。その実現のためにも何を売り物にすればいいのかをまず見つけることです。そうした地域の個性や魅力をアピールする力のある自治体が今後の立地競争の中で企業の心を捉えていくでしょう。その意味では、地域間の競争になっているのです。黙っていては何も変わりません。今はウェブサイトをつくってしまえば情報発信は簡単にできます。しかも国内だけでなく海外へも簡単に情報発信できる時代なのです。誘致に関しても、国内企業だけでなく、広く海外企業も視野に入れた戦略をとっていくといいかもしれません。

―地域を変えていくためには何が重要になってくるでしょうか。

鈴木 やはり首長のリーダーシップです。リーダーシップがあるかどうかで結果に大きな差が出てきます。首長がトップダウンで動けば、スピード感のある仕事ができるはずです。地元の基盤産業や大学、金融機関など地域と密着した組織との連携を図るためにも迅速な決断が重要になってきます。首長はCEOであり、地域の資源を見つけ、魅力を語るべきなのです。地域の魅力をアピールすれば、人は集まってきます。人が集まってくれば、企業も集まってくる。いわば「発掘」と「発信」が必要なのです。

―これから地域をさらに活性化させていくために必要なことはなんでしょうか。

鈴木 少子高齢化、グローバル化、高度情報化といった大きなメガトレンドを踏まえながら、地域の活性化のためにも地域のポテンシャルを発掘して、その資源を差別化させて、さらに商品・サービス化して内外に情報発信していく。そうして世界の中で競争しながら、グローバルとローカルを融合させた"グローカル"という姿勢が地域づくりに必要になってくると思います。

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