小学生が着る「標準服」の"標準"とは何なのか かつては「洋装における標準」を指していた

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戦前に岡山・児島で製造された男女学生服(写真:制服メーカー「日本被服」)
小学校における「標準服」の存在は、東京・銀座にある中央区立泰明小学校の標準服を巡る騒動で広く知られるようになった。そもそも標準服は制服とは異なり、生徒に着用の強制力を持たない。それにもかかわらず、なぜこれまで受け入れられてきたのか。『学校制服の文化史』などの著書がある難波知子・お茶の水女子大学准教授に「標準服の文化史」を解説してもらった。

学生服生産量で日本一を誇る岡山県では、ほとんどの公立小学校の児童が揃いの標準服を着ている。「お国柄」とでも言うべきか、標準服のことを堂々と「制服」と呼ぶ学校もある。

義務教育の公立小で揃いの標準服を着る慣例は、東京を含む東日本では少なく、西日本地域で多いといわれている。標準服の在り方は全国共通ではなく、地域や学校によって異なる様相がみられる。

標準服の“標準”とは?

「標準服」という言葉の初出は詳らかではないが、戦前にはすでに使用されている。その使用例には、2つの系統がある。1つは、現在と同じく小学校の標準服。もう1つは、女性の婦人標準服という使われ方である。

前者は、児童が着用すべき服装の「標準」として示された。後者は、戦時下における日本女性が着用すべき服装の「標準」として示され、当時の男性の国民服に相当するものだった。

なぜ、児童の服装に「標準」が示されなければならなかったのか。

戦前における小学校児童の標準服とは、具体的には洋服の形式・デザインの提示であった。大正時代には生活改善運動の中で、児童服から洋装化を進めようという主張がなされ、公立小でも洋服の着用が奨励されるようになっていく。当時、洋服の機能・衛生面が和服より優れていると評価されたからである。

ただし、当時、洋服後進国だった日本では、洋服に対する知識や経験が乏しく、どのような洋服が通学服としてふさわしいかをすぐに判断することが難しかった。

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