《若手記者・スタンフォード留学記 7》先進国でトップ。アメリカの高い出生率の秘密

 


 ここ数週間、金融危機のニュース一色のアメリカですが、それまでは、一人の女性がアメリカのメディアを席巻していました。

 

その名は、サラ・ペイリン。マケイン氏から副大統領候補に指名された、44歳のアラスカ州知事です。彼女を語るときの決まり文句は、「女性初の副大統領候補」という言葉ですが、個人的には、知事という多忙な職に就きながら、5人の子供(一番下の子はまだ生後5カ月!)を育てている、というワーキングマザーとしての側面に興味をそそられました。

最大の興味は、「なぜ仕事と家庭をこうも見事に両立できるだろうか?」ということです。

日本のみならず、ドイツ、イタリア、スペイン、韓国、台湾、香港などなど、先進国の大半が出生率の低下に悩む中、アメリカは少子化などどこ吹く風。現在の出生率は、なんと2.1。これは、1960年代以降、最高の数値で、先進諸国の中でも最も高いとのこと。米国人口統計局によると、2008年に3億人を超えたアメリカの人口は、2050年には、4.2億人に達するといいます。

出生率上昇の理由を語るとき、もっぱら「移民の増加(移民は一般的に出生率が高い)」が挙げられますが、それだけが理由とは思えません。

より、本質的な理由があるのではないか? この私の疑問に答えてくれたのが、『ニューヨークタイムズマガジン』(6月29日号)に掲載されていた「No Babies?」という特集です。

子供を増やすなら、「米国型」か「北欧型」

 このレポートは、北ヨーロッパと南ヨーロッパの間にある出生率の違いを読み解きながら、子供が多い国、少ない国の共通点を探る、8ページに渡る特集記事です。

 レポートの要点は3つです。

1) 「女性が働きに出れば出るほど、忙しくて子供を生まなくなる」という通説は疑わしい。むしろ、働く女性の割合が高い国ほど、出生率が高くなる傾向がある。

2) 夫が育児を手伝わない国では、出生率が低くなる傾向がある。

3) 子供が多い社会は、自由主義風の“フレキシブルな社会”か、福祉国家風の“優しい社会”のいずれかである。中途半端な社会では、出生率が低い。

ここで言う、“フレキシブルな社会”の代表が、アメリカです。とくにシリコンバレーの住民と話して痛感するのが、労働市場の柔軟性です。

コロンビア大学でMBAを取って、ベンチャー企業に就職したばかりのアメリカ人の友人曰く、「シリコンバレーでは、みんな2年ごとに職を変える」とのこと。就職活動にあたり、年齢は不問ですから、スキルや経験があれば、転職や復職がすぐにできるわけです。

アメリカでは、出産、子育てに関する公的な援助は手厚くないですが、子育てした後にも、仕事を見つけられやすいというメリットがあります。日本の場合、総合職で働いていた女性でも、一度会社を辞めてしまうと、もう同じような職には就けないか、就けたとしても労働時間が長すぎて、家庭との両立が難しくなってしまいます。そうすると、選択肢は必然パートや契約社員に絞られてしまいます。優秀な女性が、仕事と家庭の両立を存分に追及するためのチャンスがそもそもないわけです。

アメリカで感じるもう一つのフレキシビリティーは、地域の助け合いです。

ワーキングマザーにとって、とくに助かるのが、草の根ベビーシッターの存在です。もちろんプロのベビーシッターもいますが、「近所の知り合いに子供を預けて、給料は気持ち程度」みたいな、相互扶助の精神が生きています。友人に「今の日本にそういうカルチャーはないね」と言ったら、「絶対必要だ」と強く言われました。もちろん、他人に預けるのが不安な人もいるでしょうが、同じコミュニティの中であれば、不安も和らぐはずです。

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