「ゾゾ頼み」から脱却へ、アパレル企業の苦闘 自社EC立ち上げを目指すが、ハードルは高い

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だが、どのアパレルも充実した自社サイトを構築できているわけではない。課題の一つが人材確保だ。

サイトの機能を充実させるには、エンジニアのほか、膨大な顧客データを分析できる人材が必要となる。転職支援サービスを行うパーソルキャリアの藤田芳彦氏は「アパレル業界ではサイトの運用スタッフなどネット通販にかかわる求人が増えている」と指摘する。同社の調べでは、17年のネット通販関連の求人は前年比で4割増えたという。

老舗アパレルからは「販売員の確保ですらままならないのに、EC関連の人材は年収も高騰していて採用できない」と悲鳴が上がる。

初期投資の重さもネックに

ベイクルーズには7年前まで社内エンジニアはほとんどいなかったが、他社からの引き抜きや中途採用を続け、現在15人になった。それでも十分というわけではなく、現在もつねに募集しているという。「中途でも入社後はビジネス的視点や技術力の育成が必要。採用にかかる時間的コストは大きい」(加藤執行役員)。

中小アパレルにとってはシステム構築などへの初期投資の重さもネックだ。そのため自社サイトにかかわる業務を丸ごと外注しているケースも目立つ。想定以上の速さで急拡大するネット通販だが、小手先の対応に追われ、結果的にネット通販のノウハウを社内に蓄積できていないのが実情だ。

ある業界関係者は「これからITが武器になると考える人がアパレルには少ない」と自嘲ぎみに話す。モール頼みが続けば、ネットで稼ぐ力を高めていくことは難しくなる。同時に充実した自社サイトを構築するハードルも上がっていく。ジレンマを抱えたアパレルメーカーの苦悩は当面続きそうだ。

真城 愛弓 東洋経済 記者

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まき あゆみ / Ayumi Maki

東京都出身。通信社を経て2016年東洋経済新報社入社。建設、不動産、アパレル・専門店などの業界取材を経験。2021年4月よりニュース記事などの編集を担当。

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