精肉店「柿安」がフードコートに進出する事情 「丼」を主軸とした新業態は受け入れられるか

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背景には、イオン出身役員の存在がある。柿安本店の樋尾清明専務は当時のジャスコから1992年に転籍してきた。

その後、「イオン内店舗の開発は樋尾さんが担ってきた」(社内関係者)という。今回の新業態店もこのコネクションをフル活用し、激戦区のフードコート出店を勝ち取ってきたというわけだ。

路面の新業態開発にも着手

新業態の育成に注力する柿安本店は目下、業績好調を維持している。今2018年2月期は売上高440億円(前期比1.1%増)、当期純利益16億円(同27.7%増)と、過去最高益を更新する見込みだ。

昨年実施した精肉商品などのラインナップ拡充が奏功し、増加傾向の中食需要を取り込んでいる。高騰していた牛肉相場がここにきて落ち着いていることも、仕入れ面でプラスになっている。

柿安本店はフードコート型業態のほかにも、新業態の開発を進める。昨年10月には、路面総菜店の「パーシモンガーデン」を三重県桑名市の県道沿いに開業。総菜やサラダ、パンなどを提供し、イートインスペースも備える。実験店的な位置づけで、これまでは弱かった路面店を活発化できるか、その試金石となる。

外部環境の変化に柔軟に対応しながら、着実に成長路線を歩むことができるか。146年の歴史を持つ老舗精肉店の新たな挑戦は始まったばかりだ。

梅咲 恵司 東洋経済 記者

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うめさき けいじ / Keiji Umesaki

ゼネコン・建設業界を担当。過去に小売り、不動産、精密業界などを担当。『週刊東洋経済』臨時増刊号「名古屋臨増2017年版」編集長。著書に『百貨店・デパート興亡史』(イースト・プレス)。

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