中国の経済指標の好転は本物か? 景気・経済観測(中国)

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ただし、中国経済に強い自立的な回復力があるわけではない。小規模とはいえ、景気刺激的な政策によって内需の伸びが下支えされている面があるからだ(景気刺激策の内容は、前号「景気底打ち?中国の経済運営は変わったのか?」)。実際、8月には、道路などインフラ関連の投資がやや高まっている。

資本ストックの過剰感はまだ強く

また、在庫の過剰感は弱まったとはいっても、生産能力の過剰感はまだ払拭されていない。生産の伸びが回復基調にあるとはいえ、そのペースは緩やかだ。工業部門の設備稼働率が2013年6月末の78.6%から大きく改善しているとは考えられない。

生産能力過剰業種の典型例である鉄鋼業をみても、資本ストックの調整圧力が今なお強いことがわかる。

2012年末の鉄鋼業の設備稼働率は72%と低水準であったが、それにもかかわらず、今年上半期には新たな高炉13基が操業を開始した。今年末までに、さらに7基ほどの新たな高炉が生産し始めると目されている。約20基の高炉新設により増える生産能力は2500万トン前後とのことだ。2012年の生産能力の増加分である約5000万トンと比べれば小さいが、設備の過剰感を鉄鋼業界内に漂わせるには十分な規模である。力強い投資は望み薄であるし、望ましいことでもない。

新設高炉の操業開始は、鉄鋼生産を上振れさせ、足元の鉄鋼価格弱含みの一因になっているとも伝えられている。中国鉄鋼工業協会の鋼材価格指数は、8月23日をピークに下落に転じており、9月27日現在、ピーク対比1.6%低い水準にある。生産能力の過剰感が掃けないうちは、在庫の過剰感も再び高まりやすいことを示す好例といえる。

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