東京の格差、「災害復旧が遅い地域」はどこか もう想定外とは言わせない…東大教授の挑戦

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■ レジリエンスカーブ:⾸都直下をベースのシナリオとしたうえで、パンデミックや湾岸地域における⼤規模被害等の重畳的なケースにも対応したシナリオを⽤意。災害発⽣後のタイムラインとパフォーマンスの変化を⽰した復旧曲線(レジリエンスカーブ)を描出することで、シナリオごとに復旧度合いに変化が⽣じることを⽰している

災害がいつどのような形で襲ってくるか、分からない。東海地震は予知できるとして、それを前提にして⽴てていた防災対策をも、予知できないことを前提に対策を⽴て直すように改められた。どういった「想定」をするかによって「想定外」が⽣まれてしまう。

東⽇本⼤震災でも、あちらこちらで想定外が発⽣した。福島第⼀の炉⼼溶融がその最たるものである。⽇本の電⼒事情からすれば、全交流電源喪失というような事態はありえないとされてきた。たとえあっても、短時間に復旧できるので、原⼦炉の冷却にはなんの問題もないとされてきたのである。しかし3⽉11⽇、発電所に外から電⼒を供給する鉄塔が地震で崩壊し、かつ⾮常⽤電源は津波による浸⽔で動かなくなり、全電源を喪失して冷却できなくなった。

■ 危機管理の概念図:危機管理はいくつかのフェーズから構成される。ある重⼤な事件が発⽣した際のダメージを軽減し、復興にかかる時間を短縮するためには、⽇常的なリスク管理の重要性はもちろんだが、万が⼀の時の対応⽅法と必要な⼿続きが実⾏可能な形で事前に定められているかがポイントとなる

この研究では、多様なシナリオを検討しようとしていた。しかしそれには計算の負担があまりにも⼤きく、現実には、⾸都直下地震のケース、そこにパンデミック(広域感染)が重なったケース、そして湾岸部被害拡⼤のケースと3つのシナリオが検討された。

もっとモデルの精度を上げたい

ただこのモデルでも「かなり抽象的で、もっともっと精度を上げたい」と古田教授は⾔う。たとえば「サービスと⾔っても、何となく物流が滞るということは⼊れてあるが、⾦融とか⾏政サービスのようなものは⼊っていない」。個別具体的なサービスが⼊らないと、リアリティに⽋けるというのである。

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