五輪スケート「歌付き曲解禁」はよかったのか それでも羽生結弦は器楽曲にこだわった

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観客からは紛らわしいとか耳障りだと思われることもあると、メドベージェワは10月、モスクワで行われた大会で認めている。「音響システムでトラブルが起きたのだろうと思った人もいる」とメドベージェワは笑った。

ボーカル付きの楽曲を受け入れている選手たちに特に人気なのが、自分たちが生まれるより何十年も前に流行った1960~1970年代の曲だ。

バンクーバー五輪のアイスダンスで金メダル、ソチ五輪では銀を獲得したカナダのテッサ・バーチュー(28)、スコット・モイヤー(30)組は今シーズン、ローリング・ストーンズの「悪魔を憐れむ歌」にサンバのビートを、イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」にルンバを、サンタナの「僕のリズムを聞いとくれ」にチャチャを乗せて踊っている。

ビートルズの曲で滑ってみたが

冒頭のマレーシアのイーは、「必ずしも歌う必要はなく、言葉を口に出しさえすればいい」現代の音楽に比べ、この時代の曲は意味が深くて本物だと言う。

もっとも、そうしたノスタルジーにも限界がある。今大会、オンドレイ・ホタレク(34)と組んでペアに出場したイタリアのバレンティナ・マルケイ(31)は、父のマルコからビートルズの曲で演技をしてくれと頼まれたことがある。マルコもマラソン選手として、2度の五輪出場経験がある。

「父はビートルズに合わせて滑ってくれるならおカネを払ってもいいという感じだった」と、マルケイは言う。マルケイとホタレクはエキシビションで「イエスタデイ」のカバー曲を使ったことが一度だけあり、父は感動のあまり涙を流していたという。だが、一度やればたくさんだった。

マルケイとホタレクが好きなのは、1956年にイタリア人歌手レナート・カロゾーネが歌ってヒットした風刺的な曲「アメリカかぶれ」のほうだ。

ビートルズは「私たちには合わないのでは」とマルケイは言う。「私たちは氷の上では楽しみたいの。(ビートルズは)本当にすぐ飽きてしまう」

(執筆:Jeré Longman記者、翻訳:村井裕美)

(c) 2018 New York Times News Service

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