長期金利高騰の米国で起こる「不安なこと」 財政赤字を膨張させるトランプ政権への警鐘

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米国では長期金利の上昇を警戒し、株式市場が乱高下している(写真:AP/アフロ)

2月2日、米国で長期国債の金利が一時、2.8%まで急上昇した。それも引き金となり、同日、米ニューヨークダウは前日比で665ドルも急落。2008年12月1日以来、9年2カ月ぶりの大幅安だ。国債金利急騰の背景には、米国の財政赤字が増大し、国債を増発する見通しがある。

トランプ米大統領は12日に政権2年目となる「予算教書」を連邦議会に提出した。大統領の予算教書は米国の財政運営を左右する。

米国の連邦予算は、大統領ではなく、連邦議会が決める。しかし、大統領は連邦議会が議決した予算法案に対し、拒否権を持つ。大統領は予算の中身を直接決める権限はないものの、その意向を無視して連邦議会が予算の中身を決めても、拒否権を発動されて実行されない。その意味で、大統領が出す予算教書の内容は、来年度の連邦予算の行方に影響を与える。

10年間で米財政赤字は770兆円に膨張へ

今回発表された2019年度(2018年10月~2019年9月)の予算教書は、伝統的に「小さな政府」を志向する共和党の政権らしからぬ、歳出の拡大を求めるものとなっている。国防費には2017年度比13%増の7160億ドル(約78兆円)、メキシコ国境の壁の建設費には2019年度までの2年間で180憶ドル(約2兆円)を投じ、インフラ整備のために向こう10年間で2000億ドル(約22兆円)を支出する。

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他方、いわゆるオバマケアを撤廃し、メディケア(高齢者向け公的医療保険)やメディケイド(低所得者向け公的医療保険)などの社会保障費を削減。向こう10年間で約3兆ドル(約333兆円)の支出を削る。ほかに学生ローンの見直しなどで教育費も圧縮する。

それでも歳出増が上回り、2019年度の歳出予算総額は4兆4070億ドル(約480兆円)と、2017年度比で10.7%増加する。財政赤字(国債発行額にほぼ相当)は9840憶ドル(約107兆円)となり、これは昨年の予算教書における想定よりも倍増だ。さらには向こう10年間の合計で、財政赤字は7兆0950億ドル(約770兆円)にも拡大し、昨年の予算教書で訴えていた10年後に”単年度の黒字化”は見通せなくなった。

が、米国の政府債務残高対GDP(国内総生産)比は2022年をピークに緩やかに低下するとの楽観的な試算を、予算教書で示した。なぜか。名目成長率が長期金利を上回る状態が長きにわたり続くと想定しているからだ。

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