44歳で「発達障害」診断された主婦の苦悩人生 買い物依存も症状の一つ、大人は支援がない

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「多分、頭の回転は速いほうだと思うんです。そのせいで、何げない会話の中から、この人はどのあたりに住んでいて何人家族で、みたいな個人情報を収集してしまうんです。それで、『●●さん、どこそこに住んでいるんだよね? こないだ雪のとき大変じゃなかった?』と聞いてしまって、『しまった! 気持ち悪いと思われる』となったり……。人のプライベートに立ち入りすぎちゃうんです。

また、職場に届いた荷物で『最近この会社の荷物たくさん来るね』という話になったとき、「●●製作所という会社はどこそこにあって、何を作っていて……」と、自分が知っている情報をバーっとしゃべっちゃうんです。そして、言ったあとに、あっ、みんなしらけている……と感じてしまう。言いたい気持ちが抑えられないんです」(倉田さん)

昔からガールズトークが苦手だった倉田さんは、休憩室での休憩時間も苦痛だ。みんなが話している雑談に入れない。休憩室でつけっぱなしになっているテレビを見ながら、芸能人の話などを同僚がしているが、会話の内容に興味がないためただ聞いているだけになってしまう。職場の飲み会も、職場の人に気を遣って飲んだりしゃべったりしないといけないのがつらい。

倉田さんは1年ほど前にADHDだと診断された(筆者撮影)

そんな倉田さんがADHDだと診断されたのは1年ほど前。もともとうつ病で通っていた精神科で「私、発達障害ですか?」と自ら聞いたところ、ADHDだと診断された。自分はADHDなのではないかと疑い始めたのは、買い物依存症もあるが、もう1つは片付けられないのは発達障害の可能性があると書かれている『片づけられない女たち』サリ・ソルデン(WAVE出版)を読んだことだ。「29歳、有名私大卒の彼女がADHDで抱える苦悩」(2018年1月13日配信)で紹介した公務員の三浦さん(仮名)もこの本が受診のきっかけだった。

「私も片付けられないですし、家事もできません。昨年10月にうつ病がひどくなって会社をやめ、今は求職活動をしながら合間に家事をやったりやらなかったり。でも、掃除はルンバ、洗い物は食洗機、料理は週1回来てくれるヘルパーさんに作ってもらいます。洗濯はしょうがないのでやっています」(倉田さん)

必要な人ほど支援が届いていない

現在、倉田さんは抗うつ薬や睡眠導入剤などの薬のほか、ADHDの薬であるコンサータを服用中。飲んでから12時間ほど効果を発揮する薬だ。

「コンサータを飲み始めたのは、発達障害専門の病院に転院した去年の9月か10月頃からです。それまではストラテラを飲んでいたのですが、イライラや便秘などの副作用がひどく、コンサータに変えたら劇的に効いてびっくりしました。

24時間効くコンサータがあればいいのにと思ってしまうほどです。でも、毎日飲んでいると活動的になりすぎて疲れちゃうので、休薬日も作っています。休薬日は1日寝ているのですが、そうなると生活リズムが狂いがちです。だから、旦那が起きたら自分も起きる、旦那が寝たら自分も寝る、というように心掛けています」(倉田さん)

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