五輪で注目、「北朝鮮美女軍団」は何者なのか 宣伝扇動の役割も担うウーマンパワー

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その中でも才能を見いだされて入学した金星学院の学生たち。歌を歌わせれば胸に迫る歌声に一糸乱れぬ踊りや拍手もお手のもの、ということだろう。また、選手への応援に加え、応援団は宣伝扇動という役割を持たせるのも北朝鮮。韓国などでその存在を知らせることができれば、役割は十分に果たしたということになる。

音楽団はドリームチーム

今回の五輪では応援団のほか、芸術団も派遣されている。今回北朝鮮から派遣されたのは、選手46人、応援団やテコンドー演武団、記者など280人、音楽団を含んだ芸術団140人に上る。

開催地の平昌に近い韓国東部・江陵(カンヌン)市で8日、ソウルでは11日に音楽団による公演が行われた。楽団名は北朝鮮の名勝地からとられた三池淵(サムジヨン)管弦楽団。当初韓国側は、これまで知られていない楽団の名前に戸惑ったようだ。

「(1946年に設立の)万寿台芸術団に所属する楽団を中心に、一部の歌手や演奏家などを入れて再構成した楽団だ」(北朝鮮高官)。平壌に音楽留学経験があるなど北朝鮮音楽に詳しい李銀河(リ・ウナ)氏は「北朝鮮のトップの楽団の芸術家たちで編成されている。ライトなクラシックや北朝鮮の曲、映画音楽などもクラシック風にアレンジして演奏する」と説明する。

同楽団の指揮者の一人は、北朝鮮最高位の功勲国家合唱団団長で人民芸術家であるチャン・リョンシク氏であることを見ても、「最高位の芸術家で構成された、いわばドリームチーム」(李氏)。演奏された曲目は、「韓国人の気持ちにとても合う曲目だった」(公演を取材した韓国紙記者)。政治的メッセージが強いものは避け、「Jへ」「愛の迷路」「男は船、女は港」など日本でも知られた韓国の懐メロを多く取り入れた。

韓国メディアでは、選定された韓国曲に一定の配慮がにじみ出ていたとみる報道もある。前述の曲目は、1999年から2000年代前半に平壌などで数回行われた韓国歌手による訪朝公演で人気を博した曲目が多い。「南北交流の成果を暗に伝えようとしたとも考えられる」(前述の韓国紙記者)。

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