「宇宙ビジネス」は大きな転換点を迎えている スペースXの大型ロケット打ち上げの意義

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2月6日に打ち上げられた、米スペースXが開発した「ファルコン・ヘビー」(写真:Mike Brown/ロイター)

2月6日に起業家のイーロン・マスクのスペースXが、大型ロケット「ファルコン・ヘビー」打ち上げを行い、成功したことは、人類による宇宙探査の道における大きな転換点だ。米国とソ連がロケット開発競争を開始してから初めて、世界で最も高性能なロケットが一民間企業によって設計・製造されたのである。

これは、人類の宇宙における「力関係」に、大変化が起きていると一層感じられるような事態である。最近までこうしたロケットは、ほぼ100%国家による事業だった。ニール・アームストロングとその仲間を月まで運んだ「サターンV」ロケットは、史上最大かつ最も費用のかかった国家プロジェクトの1つが生み出したものだ。

宇宙ビジネスを担うのは民間企業に

民間企業は、宇宙には潜在的ビジネスチャンスがあると長い間見込んできた。商業的打ち上げは、1980年代にフランス企業アリアンスペースから始まった。だが、10年前までは、企業、特に米国の企業について言えば、米国かロシア政府のロケットを使って自社のペイロードを宇宙に運ぶというのが普通で、その逆については考えられなかった。

この変化の影響は非常に大きい。実際、人類がゆくゆくは火星に到達するかどうか、そして、それがいつのことかという話が、「あり得る」ことになっただけでなく、おそらくそれは民間企業の旗のもとで行われるだろうからだ。

これは、自動車業界の大物から宇宙起業家への転身者であるマスクがオープンにしている目標だ。今回のファルコン・ヘビーの打ち上げは、自身が所有する電気自動車、チェリーレッドの「テスラ ロードスター」を乗せて行われ、ロケットはデヴィッド・ボウイの『火星の生活』の調べにのって火星へと飛び立った。

これは、実に巧妙なマーケティング戦略である。が、同時にこれは、明白な形での野心の表明でもある。

民間企業は、かつては政府の既存技術に主として頼っていたが、今では自力で歩みを進めている。ファルコンのようなブースターは、ケープ・カナベラルなど米航空宇宙局(NASA)の施設から打ち上げられることが多いかもしれない。しかし、ロケットには自社で作り上げた技術が含まれている。たとえば、自ら着陸の制御を行うことも、大気中でドローン船が回収することもできる、再利用可能なブースターなどだ。

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