「居抜き物件取引サイト」という新しい金脈 テンポイノベーション社長に聞く

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村上:原さん主導の現経営体制が本格的に始動した2011年7月から、居抜き物件転貸という現在の事業に一本化するわけですね。このフェーズは、「成長可能性に関する説明資料」で「第2の創業」と位置づけられています。

:実は、前任者が任期満了で辞めた後、クロップスの前田さんに呼ばれて社長就任の要請を受けました。でも、「人望があって聡明な志村(現常務)が社長になったほうがいい」と私は返答しました。純粋に、そのほうが会社としてうまく機能すると考えたからです。すると、前田さんから「社長を務める自信がないのか?」と聞き返されました。その言葉が私の中のスイッチを押しましたね。「自信がないわけがないでしょ!」と。こうしてトップに立つ決心がついた途端、自分の中で霧が晴れたようにパラダイム転換が起きました。会社とは、社長がビジョンと理念を示さなければ前進しないものです。就任を決めてから1時間後には、サービス業ではなく不動産業こそ当社がめざしていることだという方針が私の中で明確になり、店舗転貸事業へと大きく舵を切っていきました。

アパマンのサブリースとは似て非なるビジネス

村上:原さんは代表取締役就任を引き受けたわずか1時間後には、東京周辺での居抜き店舗物件転貸に事業を一本化することを決意したとのことですが、そこに至るまでにはどのような思考の積み重ねがあったのでしょうか?

:この会社に入ってから代表取締役になるまでの約5年半で、とにかく考えられることはすべてやり尽くしたという自負がありました。そのうえで選択と集中を行うとすれば、東京周辺の居抜き店舗物件の転売に的を絞るのが一番だという結論しか出ませんでした。

村上:いろいろ試行錯誤したことで感覚が研ぎ澄まされていったわけですね。では、決断した後にはもう選択の変更ということは一度もなかったということですか?

:一度もありません。ただ、「何のために私たちが存在しているのか」という理念と、「そのために何をやるのか」というビジョンを社内でしっかりと共有することに3年程度の歳月を必要としました。つまり、社内で人を育てるのにそれだけの時間がかかったということです。

村上:非常にユニークで、他に例を見ないビジネスモデルだと思いますが、御社以外にも同じような事業を展開している会社はあるのでしょうか?

:存在するかしないかで言えば、山ほど存在しています。いわゆる又貸し屋がもっと小さな規模で転貸を営んでいます。また、サブリースの手法にも似ていると言われます。しかし、そもそもサブリースがアパートやマンションといった住宅に用いられるスキームであるのに対し、私たちは店舗に特化しています。それに、契約形態は同じでも、物件を貸す側の安心感はまったく異なってきます。私たちが個別に複数のオーナーと賃貸契約を結んでいるのに対し、サブリースの場合は建物単位の一括借り上げです。一括借り上げだと、不動産オーナーは個々にどういった人に貸しているのかを知る由がありません。その点、当社の場合は個別の契約ですべての案件においてオーナーから承諾を得ていますから、どんな人が入居してどういった商売を営んでいるのかをきちんと把握できるのです。

村上:そうすると、貸す側にとっては大きな安心感につながりますね。特に飲食店に貸す場合は、不安材料が多い分、それは大きな強みになりますね。そして、「店を出したいが、いい物件がなかなか見つからない」という人たちもたくさんいますから、御社が窓口になることでそういった借りる側のニーズにも広く応えられるわけですね。

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