日本上陸20年、フォーシーズンズの野望 椿山荘東京と別れた後の、新たな戦略

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最大の会社でなく、マーケットのリーダーになりたい

お客様の目からしても、われわれが10のホテルを持っていようが、100のホテルを持っていようが関係ないと思います。個人個人がまるでたったひとりの客であるかのように扱われたいと思っているのです。ですから、われわれはつねに高品質にフォーカスを置いています。最大の会社になるのではなく、高級ホテルのマーケットの中でリーダーになっていきたい。

東京国際フォーラムを望むプレミアルーム(丸の内 東京)

われわれはどこに進出していくのかをしっかり見極めなくてはいけないし、消費者はつねに変化していますので、それに応じた進化も必要です。技術的な変化も著しく、たとえば携帯電話でチェックインできるようになりました。変わっていないのは、フォーシーズンズが持つカルチャーとバリューの2つです。

フォーシーズンズをひとつにまとめる「ゴールデンルール」は、「自分が扱ってほしいように、自分が受けたいように、自分がやってほしいことを人にもやってあげなさい」ということです。これはゲストだけでなく、従業員に対しても、ビジネスパートナーに対しても、お互いに尊敬し合い、同様な扱いをしよう、という共通意識があります。私たちが日本をとても好きなのは、日本社会にもお互いを尊敬しあうようなカルチャーがあるからです。

――不動産業界出身のアレン・スミス氏がCEOとなり、経営に変化はありますか。

9月23日から彼がCEOです。プルデンシャル・リアルエステイトで26年間働いていましたので、不動産業界での経験が豊富なのが強みです。新しいリーダーが来ることで、とてもワクワクしています。

フォーシーズンズは時間をかけて、単に適格なだけではなくて、社内文化的にもうまく収まる人材を探していました。当社はひとつのブランド(看板)しかありません。6つとか7つのブランドを持っているライバルもありますが、われわれはつねにベストを提供し続けたい。

創業以来、歴代のCEOは2人だけです。いまの世界は目まぐるしく変わっています。どんなCEOであっても、チャンスが来たらそれをしっかりとらえられる機動性が求められます。変化、進化に対してオープンである必要があります。CEOが変わっても、その重点から大きく逸脱することはないと思います。

(写真提供:フォーシーズンズホテル丸の内 東京、撮影:今井 康一、風間仁一郎)

 

※10月15日発売の週刊東洋経済10/19号では、巻頭特集「『おもてなし』で稼ぐ」(仮題)で観光立国に挑む日本にフォーカスをあてる。加速する外資系ホテル進出ラッシュのほか、外国人客拡大に向けた観光や小売り、外食などの各業界動向、さらに訪日3000万人時代へ向けてのハードルなど、幅広く取り上げる予定です

山川 清弘 東洋経済『株式ウイークリー』編集長兼「会社四季報オンライン」副編集長

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やまかわ きよひろ / Kiyohiro Yamakawa

1967年、東京都生まれ。91年、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。東洋経済新報社に入社後、記者として放送、ゼネコン、銀行、コンビニ、旅行など担当。98~99年、英オックスフォード大学に留学(ロイター・フェロー)。『会社四季報プロ500』編集長、『会社四季報』副編集長、『週刊東洋経済プラス』編集長などを経て現職。日本証券アナリスト協会認定アナリスト、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト。著書に『世界のメディア王 マードックの謎』(今井澂氏との共著、東洋経済新報社)、『ホテル御三家 帝国ホテル、オークラ、ニューオータニ』(幻冬舎新書)など。

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