相次ぐ談合疑惑、問題はゼネコンだけなのか リニアや外環道の工事で浮かび上がった課題

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品川―名古屋間約286キロメートルの大半がトンネルで、中でも山梨、静岡、長野にまたがる南アルプストンネルや品川駅地下、名古屋駅地下は超難関の工事とされている。大手4社抜きにしてリニアは建設できないというのは、業界関係者であれば誰もが認めるところだ。

「リニアについては利益を確保しながらきちんと工事を行うためには受注調整が必要だという発想が、ゼネコンだけでなくJR東海にもあったのだろう。現場に行けば行くほど、工事をきちんと行うことに意識が向き、発注者や他社と協力しようという発想につながる。受注前のこうしたやりとりも談合に当たると認識しないかぎり、談合は今後もなくならない」と独占禁止法が専門である上智大学法科大学院の楠茂樹教授は指摘する。

発注方法に問題はないのか

外環道については、発注方法を疑問視する声がある。問題となっているのは外環道と中央自動車道とを結ぶ中央ジャンクションだ。「世界最大級の難工事」(国土交通省)で、リニアと同じく、スーパーゼネコンでなければ完成は難しいとされている。

NEXCOが発注にかけたのは4つの工事だ。入札は「一抜け方式」という特殊な方式が取られ、1つでも工事を受注したゼネコンはそれ以外の工事を実質的に受注できない仕組みになっていた。

スーパーゼネコン4社に対し4つの工事を用意すれば、均等に住み分けがなされ、競争性が犠牲になるのは当然だ。加えて難工事であることを勘案してか「スーパーゼネコンしか受注できないような条件を設けていた」という声も上がる。

リニアにしても外環道にしても技術を持つスーパーゼネコンに受注させたいなら、競争入札ではなく随意契約(任意で決定した相手と契約)を結ぶ手段がある。だがその場合には「なぜそのゼネコンを選んだのか」という説明責任が生じる。競争入札は「価格が一番安いから」というだけで説明がつき、談合が起きても被害者の立場を取れるため、発注者にとって楽な制度だ。

リニア、外環道の疑惑は、「談合=暴利を貪る」というこれまでの構図では語りきれない。最適な受注業者を選ぶにはどうすればよいのか。長年の課題があらためて浮き彫りになっている。

週刊東洋経済2月17日号(2月13日発売)の特集は「ゼネコン 絶頂の裏側」です。
一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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