小田急vs京王「多摩の陣」で最後に笑うのは? 春のダイヤ改正で通勤スタイルが様変わり

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京王は、午前6~8時台に多摩センター始発の速達列車を5本設定していることが大きなアドバンテージとなっていた。通勤ライナーのように追加料金を支払うことなく、朝の時間帯に座って通勤できる。このメリットは大きい。そこへ小田急は同時間帯に多摩センター始発の新宿行き通勤急行を6本新設すると発表した。

新ダイヤを発表する京王の紅村康社長。京王はライバル小田急の戦術を徹底的に分析、利用客の囲い込みに動く(撮影:尾形文繁)

小田急から遅れること約3カ月、京王が発表したダイヤ改正では、京王多摩センター駅の利便性をどう高めるかが、座席指定列車と並ぶ関心の的となった。

はたして、京王が打ち出した策は午前6~8時台の多摩センター始発を1本増発して小田急と同じ6本にするというものであった。また、新宿までの所要時間をラッシュピーク時40分に短縮した小田急に対抗して、京王も最短38分に短縮した。複々線化のメリットが得られない中での京王の時間短縮。過密ダイヤを縫っての速達化はさぞかし大変な作業だったに違いない。

京王は「運賃値下げ」で小田急を攻める

ここまでは小田急の攻勢に対する京王の「守り」の姿勢のように見える。しかし、京王は複々線化とはまったく違う角度から小田急を攻めた。その武器は「値下げ」だ。京王は相模原線の建設費を回収するため、1979年から通常運賃に加算運賃を上乗せしていた。

今回はその加算運賃の一部を引き下げる。前述のとおり、多摩センター―新宿間の運賃は京王のほうがもともと安いが、3月17日から同区間の運賃をさらに20円値下げして319円とする。小田急との運賃差は31円から51円に広がる。

普通運賃とは裏腹に同区間の1カ月通勤定期に関しては京王が1万2680円、小田急が1万2940円と小田急が差を詰めている。しかし、今回京王は750円値下げし、1万1930円とする。両者の差は1000円を超える。ここまで差が開けば、「小田急対策」としてはかなりの効果が期待できそうだ。

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