米国で浮上した「北朝鮮攻撃シナリオ」の中身 朝鮮半島の緊張は収まっていない

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平昌オリンピックの開会式を明日に控え、北朝鮮からは続々と応援団などが韓国入りしている(写真:Ed Jones/AFP)

凍てつくような寒さの韓国で、平昌冬季オリンピック開会式が明日に迫る中、朝鮮半島の冷えきった政治情勢も露になりつつある。韓国では、文在寅大統領が、90歳になる北朝鮮の名目上の元首、金永南と、金正恩氏の妹、金与正を接待する一方で、日本では米マイク・ペンス副大統領と、安倍晋三首相が固い握手を交わしていた。

金永南率いる北朝鮮の代表団は、少数の選手と応援団、芸術団、職員などで構成されている。今回の目的は、韓国だけでなく、全世界の視聴者に向けてプロパガンダという弾幕を見せつけることである。

緊張緩和は難しい状況にある

一方、ペンス副大統領は、「冬季オリンピックという強力な象徴を、北朝鮮政権にかかわる真実を覆い隠すために使わせない」ため、「反プロパガンダキャンペーン」を率先して行うと述べた。今回は、北朝鮮に17カ月間も拘束された後、昏睡状態でアメリカへ帰国し、数日後に亡くなった米国人学生の父、フレッド・ワームビアを連れだってやってきた。

ペンス副大統領は韓国に向かう途中で日本に立ち寄り、安倍首相と会談。オリンピックにおける北朝鮮のプロパガンダをできるだけ抑えることで合意した。両首脳は、北朝鮮との関係改善の糸口を見出そうとしている文大統領に対して懐疑的な見解を示すとともに、北朝鮮に対する制裁がようやく効果を表しつつある中、韓国政権が、制裁を緩める行動に出ることに対する懸念を共有した。

文大統領は、少なくともオリンピック開催期間中は確保されている停戦協定の維持に笑顔で全力を尽くすだろう。しかし、緊張関係が続いていることに変わりはなく、今後、それが何らかの形で表面化することは間違いない。

実際、米政権周りでは最近、戦争をほのめかす発言が増えてきており、緊張緩和はますます難しい状況にある。北朝鮮の人権擁護運動に反発する動きがこうした流れを後押ししており、イラク戦争前にイラクとサダム・フセインに対して中傷行為が増えたのと同じように、戦争に向けた「雰囲気作り」が着々と進んでいると見る向きもある。

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