米国で浮上した「北朝鮮攻撃シナリオ」の中身 朝鮮半島の緊張は収まっていない

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ペリーとカーターは当時、外交努力では北朝鮮のミサイル発射性能競争を止めることはできないとの考えだった。そしてICBMの打ち上げを成功させれば、「北朝鮮をさらにつけあがらせることになるだけ」であると主張していた。すなわち、軍事攻撃以外の選択肢はないと言っていたのだ。

しかし、現在ペリーは、北朝鮮の核兵器やミサイル性能の開発と向上により、もはやこの選択肢は実行可能なものではなくなった、と考えている。しかし、トランプ政権の現在の判断では、これは明確に「今現在」の選択肢なのである。

「オリンピック休戦」はいつまで続くか

軍事計画担当者たちが個人的に明かしてくれたところによると(そして、これはホワイトハウスにも通達済みである)、このシナリオは北朝鮮の反応をエスカレートさせる、という重大なリスクを冒さずに実行することは不可能だという。しかし、こうした警告をトランプ大統領や側近アドバイザーたちが真剣に考慮しているのか、あるいは受け入れているのかは、まったく明らかにされていない。

この選択肢が残されるとすれば、それが実行されるのは、今年の終盤になってからだろう。また、NEOや朝鮮半島界隈に駐屯する米軍の増強といったかなり大掛かりな準備の兆候がないかぎり、実行される可能性は低い。しかし、これには文政権が公然と反対の態度を示すことは明らかだ。

従って、当面はおそらく朝鮮半島では「オリンピック休戦」が続くことが予想される。世界中のテレビの視聴者は、競技の模様や、スケートリンク、ステージ上での宣伝合戦さえ、ソファでくつろいで見ることができるだろう。

しかし、韓国で雪が溶けるとき、多くの場所で凍結が終わり、凍った地面の下から何が現れるのかを目にすることになるだろう。

ダニエル・スナイダー スタンフォード大学講師

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Daniel Sneider

スタンフォード大学ショレンスタインアジア太平洋研究センター(APARC)研究副主幹を務めている。クリスチャン・サイエンス・ モニター紙の東京支局長・モスクワ支局長、サンノゼ・マーキュリー・ニュース紙の編集者・コラムニストなど、ジャーナリストとして長年の経験を積み、現職に至る。

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