ソフトバンク、「主力子会社IPO」の勝算と懸念 親子上場が内包する課題を乗り越えられるか

拡大
縮小

ソフトバンクグループは2017年、サウジアラビアなどと10兆円規模のビジョン・ファンドを立ち上げたが、孫氏は第2弾のファンド立ち上げ構想も明らかにしている。重視するAI(人工知能)やあらゆるものがネットにつながるIoT(モノのインターネット)関係など、海外企業の積極的な出資や買収を続けており、今後も資金需要は高まる見通しだ。

巨額買収を繰り返すソフトバンクグループの有利子負債は約14.7兆円に達している。ソフトバンクの上場で2兆円規模のキャッシュを得れば、有利子負債の返済や、さらなる買収といった手を打つことも可能だ。

売上高に占める比率は4割弱まで縮小

ソフトバンクグループはビジョン・ファンドやスプリントなど、多角化が進んだことで、国内通信事業がグループ全体の売上高に占める比率は4割弱まで縮小している。ソフトバンクの上場は、グループ全体の市場評価が保守的に見積もられる「コングロマリット・ディスカウント」の解消にもつながりそうだ。

「これまでは(上場している)ソフトバンクグループにしか投資できなかったが、国内通信を中心とした事業に興味のある投資家が直接投資をできる道筋をつくりたい」(孫社長)

ただ、いいことずくめではない。孫社長は過去の会見で、ソフトバンクがこれまでソフトバンクグループにもたらしてきたキャッシュが年間5000億円以上に達すると説明してきた。

ガバナンス強化の時流の中で、ソフトバンクグループ以外の一般株主が増えることにより、ソフトバンクが稼ぎ出すキャッシュを親会社の自由にはできなくなる。

孫社長は「KK(ソフトバンク)の潤沢なキャッシュフローが使いにくくなるという懸念に対しては、配当政策を重視し、あがってくる配当でさらに資金をまわしていける」と説明する。

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