エリート官僚の人生を変えた、MBAの凄み 1000万円の留学費用を国に返還し、起業家へ

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官僚の地位を捨て、起業家へ

起業して自らCEOとなった元官僚・森田博和さんと、シカゴブースの同級生でCMOを担当するエリックさん

まさか、森田博和さん(33)が、シカゴ大学ブースビジネススクールを卒業後、こんなに早く起業するとは思ってもみなかった。

「卒業後は、経済産業省を退職して、アメリカで起業することを決めました」

そう報告があったのは、追加取材をした今年7月のことだった。

昨年の取材の過程で、森田さんの起業に懸ける並々ならぬ情熱は感じていたし、コンペで勝ち残ったこともあり、「オリガミ社」の起業プランがどんどん現実化していったのも知っていた。

しかし、起業コンペへの挑戦は、あくまでも森田さんにとっては、起業を疑似体験するためであって、最終的には、帰国後、経済産業省の仕事に役立てるためだと思っていた。

官庁出身者が、国費留学の後、マッキンゼーやBCGなど、経営コンサルティング会社に転職する話はよく聞くが、アメリカに残って起業した日本人の例は、あまり聞いたことがない。

シカゴ大学ブースビジネススクール
アメリカ・イリノイ州、シカゴ大学の経営大学院。1898年創立。全米最古のビジネススクールのひとつ。5人のノーベル賞経済学賞受賞者が教鞭を執る。トップ校の中でも、アカデミックな校風で知られる。学生は、卒業後のニーズに合わせて、1年目から、柔軟にカリキュラムを組めることが特徴。ミッションは、「永続的なインパクトを与える知識を創造すること。現在・未来のリーダーに影響を与え、教育すること」。

官僚から起業家という転身に、筆者は驚きを隠せなかった。

森田博和さんは、2011年、シカゴ・ブースに留学。留学を志したのは、内閣府宇宙戦略本部で、宇宙開発利用に関する政策の企画、立案を担当するうち、最先端の技術やビジネスをアメリカで学びたい、と思ったのがきっかけだった。

しかし、東日本大震災をきっかけに、日本を復興させるには、ベンチャー企業を生み出し、育てることが急務だと感じ、シカゴでは「起業」について深く学ぶことにした。シカゴでは数々の起業コンペに挑戦。中でも、日本のアーティストと海外の市場を結び付ける「オリガミ社」の起業プランは、2012年、シカゴ・ブースで開催されたビジネスコンペで高く評価された。

オリガミ社の創業目的は、日本のアーティストなどに海外で活躍できるプラットフォームを提供すること。コンペでは、日本のアーティストを世界の市場につなぐ役割を担い、日本文化と経済の発展に貢献できるビジネスモデルを提案した。オリガミ社の起業は、2012年夏のコンペでの入賞を機に、どんどん「現実化」していった。

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