パナ津賀社長「事業は合理的ではない」の本意

「東京に何でもかんでも集中はおかしい」

津賀:35の事業部が持っている国際競争力があるユニークな技術やモノづくり力を磨き、それらを入れ替えていけば、必要となればさっと集まって提案できる会社になりたいと考えています。

先が見えない時代においては、柔軟性を持って、お客様のお役立ちをいつも考えている会社が生き残ると思っています。うちの会社の人にこういう話をするとすごく納得してくれます。

長田 貴仁(おさだ たかひと)/1956年生まれ、1978年同志社大学卒業後、プレジデント社入社。早稲田大学大学院を経て神戸大学大学院で博士号(経営学)を取得。プレジデント社ニューヨーク駐在記者、ビジネス誌『プレジデント』副編集長・主任編集委員、神戸大学大学院経営学研究科准教授、日本大学大学院、明治学院大学大学院、多摩大学大学院などのMBAで社会人を教えた。現在は岡山商科大学経営学部学部長(撮影:ヒラオカスタジオ)

長田:今、いちばん太い大黒柱に育てようとしている電池事業は、レッドオーシャンの犠牲になるときが来るとも限りません。つねに技術革新の先頭に立ち続けようとされているでしょうが、これまで、日本企業は、半導体他や液晶でも同じようなロジックで先頭を走り続け、激しい国際競争に勝とうとしてきました。しかし、その変革速度がどんどん速くなり、技術だけではなく資本力、グローバル・マーケティング力の差が命運を左右するようになってきました。失敗に終わったパナソニックのプラズマテレビパネルへの巨額投資、他産業の事例も含めて、過去の教訓から、どのようなレッドオーシャン回避策、リスクマネジメントをお考えですか。

津賀:電気自動車が自動車市場で台頭してくれば、電池が最大の主役になるのはまちがいない。しかし、なぜ、レッドオーシャンになるのか。電池を安くしなければ普及しないからでしょうか。そこまで、普及させたら自動車メーカーそのものが持ちません。レッドオーシャンになるときは、既存のカーメーカーは全滅しているでしょう。そこまでは考えない。考えたところで意味がない。たくさんのカーメーカーとビジネスをやっていますから。

パナソニックの電池はアベイラブルではない

津賀:正直言って、どうなるかわからない。しかし、わからない中で、どう経営するのか。技術の強みを磨き世界一にする。そのために顧客軸を明確にする。円筒型でテスラ、角形でトヨタ。この2つのタイプの電池で、絶えず技術力ナンバーワンを目指す。これである程度の部分は、当面、レッドオーシャンは回避できると思う。

一方で中国、インドは、電気自動車を国家戦略として打ち出してくる。ここでどう戦うのか。もしくは、戦わないで、技術力、供給量だけでなく、さらに付加的な競争力を高め、中国、インドのインサイダーになってしまうという手もあります。こうして、表と裏の競争力のどちらも高めていきます。

われわれは、電池で顧客と組んでいます。ここが、半導体や液晶のビジネスと異なる。彼らは、できるだけ多くの顧客に売ろうとする。われわれは顧客と組むから、その顧客以外にはできるだけ売らない。ビジネススキームがまったく違う。つまり、売らないメーカーには売らない、ということです。パナソニックの電池はアベイラブル(すぐに入手できる、利用できる、得られる)ではない、という姿をつくろうとしている。技術力があるという仮説がたてば、私は正しい戦略ではないかと考えています。

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