パナ津賀社長が考える35事業部制のさばき方 「未知なる世界に中のリソースでは不十分」

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津賀:極端な言い方をすれば、トヨタとわれわれは、右と左ぐらい会社の形が違いますから、一概には比較できないと思います。私が社長になってからは、この会社をどのように見える化し、どのように経営したらいいのか、ということを考えてきました。具体的に言えば、いい意味で、自分の手をいかに抜くか、自分の悩みをいかに少なくするか、ということです。

長田 貴仁(おさだ たかひと)/1956年生まれ、1978年同志社大学卒業後、プレジデント社入社。早稲田大学大学院を経て神戸大学大学院で博士号(経営学)を取得。プレジデント社ニューヨーク駐在記者、ビジネス誌『プレジデント』副編集長・主任編集委員、神戸大学大学院経営学研究科准教授、日本大学大学院、明治学院大学大学院、多摩大学大学院などのMBAで社会人を教えた。現在は岡山商科大学経営学部学部長(撮影:ヒラオカスタジオ)

長田:松下電器産業(現パナソニック)は1933年に日本で初めて、特定の製品群について購買、製造から販売まで担当し、利益を的確に計算できるプロフィットセンターとして事業部制を導入しました。よって、津賀社長が事業部制を「復活」させたとき、古い組織へ先祖返りしたように言われました。

しかし、経営学の知見では、事業部制こそが最終的な組織デザインであり、持株会社も事業部制に収斂していくと。パナソニックの歴代経営者を見ていると、経営史の大家・チャンドラーの書名ではないですが、『組織は戦略に従う』と考え、政権が交代するたびに、組織も変わっているように見えます。

実は、松下幸之助さんが作られた事業部制が「最新」であったのでは。それに津賀社長は何を加味することで、より新しく、強いと想定される組織にしたのでしょうか。もし、事業部という縦軸に、事業部間の横軸を通し、4つのカンパニーのもとに稼働させているマルチファンクショナル組織が「津賀スタイル」というのであれば、相乗効果を生むためにというお題目が優先され、時間と人材を浪費するマルチファンクショナル組織の罠にはまらないように何か工夫されていますか。

事業部そのものが変化している

津賀:事業部制についてはそのとおりなのですが、事業部は固定的になっていません。変化しているのです。消えていく事業部、外へ出ていく事業部、統合される事業部、新しく生まれる事業部、つまり、事業部そのものが変化しています。本当の意味でのカンパニー制をこれまで当社は置いたことがなかった。あえて言えば、分社制というのがそれに近い形でした。今は、カンパニーの社長が事業部のデメリットをうまく消しながら時代の変化に対応していこうとしています。

車の産業と向き合う場合、必ずしも事業部制が適しているわけではありません。事業部制をベースに置きながら足りない部分をカンパニーが補っていく。住宅建設業界と向き合うエコソリューションズ社であれば、事業部の機能だけではカバーできない事業領域のうち何をやれば、いちばんその業界に向き合えるかを考えなくてはなりません。

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