「入院が必要な手術」の年間件数ランキング 70代で5割が罹患する「国民病」の実態とは

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白内障手術の件数は近年増加傾向にあります。年間実施件数は毎年発表されている訳ではありませんが、日本眼科医療機器協会による眼内レンズ出荷枚数の推移をみると、2016年は前年比5%増の154万枚となっています。

増加の一番の理由として、高齢化があげられます。ほかには、眼内レンズの性能が上がったことや、手術による身体への負担が減ったことで、早期段階で手術を受ける患者が増えていることも影響しているでしょう。

さらに、加齢以外に、糖尿病やアレルギー、外傷によっても水晶体の混濁は起き、最近では、若年での白内障も増加していると言われています。

人工レンズには寿命があるため、若いうちに手術を受けるようになれば、高齢期に2度目の手術を受ける可能性も出てきます。

昨今、手術を受けるケースが増えたことによって、手術による国民全体の医療費も上昇しています。診療報酬の改定の影響で、2014年度はいったん下がりましたが、翌2015年度には2651億円と、再び上昇しており、今後も上昇すると推測できます。

2003年に行われた試算では、手術による医療費は薬物療法など従来技術にかかる医療費の5~6倍と大きく上回っていました(田倉智之「白内障手術の社会的貢献度に関する考察」)。

手術の効果が大きい

一方で、その効果として、手術の増加にともない、患者の白内障治療にかかる期間が短縮していることがうかがえます。たとえば、厚生労働省の「患者調査」によると、白内障による推計入院患者数は横ばいで推移していますが、推計外来患者数は減少しています。

推計外来患者数の内訳をみると、初診患者数は横ばいで推移していますが、再来患者数が、2014年には1996年の半数近くにまで減少しています。また、入院患者の一人の平均在院日数は、2014年には1996年の3分の1程度にまで短縮しています。入院患者のほとんどが手術を受けていることから、手術前後の在院日数が短縮していると考えられます。

冒頭に述べたとおり、白内障は加齢を要因とするものが多いため、発症を減らすことは難しいと思われます。しかし、手術のための入院の平均在院日数は短縮され、外来による再診の回数が減るなど、白内障治療にかかる期間は短縮していると考えられます。

さらに、手術は根治的な要素が強く、白内障の手術で視力の低下を防ぐことによって、労働生産性の低下の防止や、社会福祉的支援費用の削減が期待できます(田倉智之「白内障手術の社会的貢献度に関する考察」(2003年)より)。

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