投資銀行の激務で、命を落とすエリートたち 死ぬほど頑張ってはいけない

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なぜこんな、悲惨な労働環境なのか

それにしても、なぜこんな悲惨な労働環境に対して、改善の努力がなされないのだろうか。

そもそも大半の人が数年だけ働いて転職、というのを前提で入ってきているのが問題だろう。ビジネスモデルと企業文化上、ちょっと環境が悪くなるとすぐに切られるので、愛社精神が育つ前に会社への愛想が尽きる。大半の社員にとって、優秀な若手バンカーが体調を壊そうが、嫌になって会社を辞めてしまおうが、別に自分が長らくいるつもりでもないので、「まぁ、よくあることさ」くらいの反応しかない。

こんな悲惨な労働環境を前に、人事は何をやっているのだ、というハナシだが、投資銀行の人事の仕事は往々にしてクビを斬るのが仕事(一応、トレーニングプログラム、とかたまにやっているが、皆、上の空で、仕事資料を読みながら時間が過ぎるのをただ待っている)なうえ、職場環境の改善とか言い出す前に、その人事の人もクビになるか、自分も仕事に嫌気がさして辞めてしまうものだから、「労働環境の改善」とか言ってる場合でないというのが実情であろう。

しかも投資銀行の利益が先細っている中で、皆が生き残りをかけてシノギを削っているときに、「うちは労働環境をよくするために仕事量と時間を減らして……」といった長期的な英断をする会社が、自主的に出現するとは思えない。

ひるがえって、規制のほうはどうなっているのかというと、一応、日本には労働基準法で1日8時間以上働いてはいけないことになっているのだが、いつものおなじみの本音と建て前の世界で「この人たちはプロフェッショナルであり、時間外勤務とかの裁量は本人の意思でやっている」とかなんとかの謎の立て付けで、労働基準法なんて本気で守ろうとしている銀行は皆無である。

つい先日も、「労働時間や時間外労働の管理がずさん」との訴えを受けて、スイスのチューリヒ州労働局がゴールドマンサックスに立ち入り検査をしたが、状況は休日数が絶対的に少ない、東京やソウルオフィスのほうがよっぽど深刻だと思う。

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