投資銀行の激務で、命を落とすエリートたち 死ぬほど頑張ってはいけない

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三徹して、すべての仕事がゴミ箱に捨てられる恐怖

前回コラムで職場への不満を述べていた大石君が述べているように、投資銀行ではヒエラルキーが硬直化しているので、ヒエラルキーの各階層で無駄な仕事が増えて、末端のアナリストレベルでは“三徹して頑張ったものが、単にゴミ箱に捨てられるだけ”みたいな非生産性も珍しくない。

まずアナリストという若手の新入り社員に、アソシエイトという20代後半からMBA上がりの若手バンカーがデータ集めとかパワポ作りを指導するのだが、その上のヴァイスプレジデントが満足するように、アソシエイトたちは不要なデータも不要なチャートもひととおりそろえて供給過多の分厚い資料を上に上げる。

そのヴァイスプレジデントも、その上のマネジングディレクターもうだつが上がらず、資料の差し替え、作り直しを指令されるので、このレベルでも無駄な作業が多くなる。そして最後はそのマネジングディレクターもお客に「こんな提案役に立たない」とか詰め寄られるものだから、各レベルで不要な、世に出ることのない仕事の数々が大量生産されるのだ。

あのシュレッダーにかけられる大量の没資料を思い出すと、投資銀行部門がなくなれば世界の森林破壊が止まり、アマゾンとニューギニアのジャングルが救われ、地球温暖化に歯止めがかかるに違いない。

本当に仕事のできると評判の高いバンカーは知的センスがあるので、不要な仕事を徹底的に削減し、周囲の仕事を減らしてありがたがられるのだが、そういう“ありがたい”スター選手は、早晩、業界から足を洗ってバイサイドに転職していくのである。

栄養ドリンク片手に孤軍奮闘

投資銀行のオフィスによっては、本当に朝の8時からその次の朝の5時、6時まで連日働く、という非人道的な労働環境だったりするのだが、最悪なのは入社後数年目のアナリスト、アソシエイトの時代だ。ただでも金融のポストが細って競争が激化しているので、入社を希望する人も、めでたく入社した人も、それはそれは悲惨である。

実はシニアアソシエイトとかになって仕事を下に振れる身分になると、仕事は夜の11時ごろには帰れるようになる。またディレクターとかマネジングディレクターでお客開拓が主な仕事になると、連日会社のおカネで接待ばっかりしているのが仕事、といった比較的幸せな身分の人も中にはいるのだが、いちばん下の若手アナリスト・アソシエイトは降りかかってくる仕事を振る下の人がいないため、すべてを抱え込んで憤死することになる。

中にはうまいこと“プレゼンテーションチーム”というパワーポイント作成チームや、アシスタントのセクレタリーの協力を仰げる可愛げのある人もいるのだが、彼女たちも彼女たちで、日頃、旅行帰りにお土産を買ってくるわけでもない可愛げのない、しかも何ら政治力のないアナリストを助ける義理はない。

大抵はレッドブルを何本も買い込んで、ビルの1階にあるコンビニのからあげ君を連日頬張りながら、たまにシャワーを浴びるためだけに家に帰ったのもつかの間、家の近所でメガシャキとかユンケルの栄養ドリンクをしこたま買い込んで、そそくさとデスクに戻ってきて、孤軍奮闘が続くのである。

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